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『あるキング』伊坂幸太郎 感想
あるキング
あるキング
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伊坂 幸太郎
徳間書店
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とある天才が天才道を突き進んで夭折するお話。

伊坂作品は、淡々とした物語をテンポのいい地の文と
格好つけた台詞回しで味付けするという印象がありますが、
この作品は全てが淡々としているように感じました。

この淡々と進む雰囲気に批判的な向きも多いですが、
自分としてはこういう雰囲気はむしろ好みなんですよね。
物語の要所要所で現れる幽霊、殺人に手を染める父親、
そして戦慄を覚えるぐらい凄まじい才能を持つ主人公。
これらが過度な装飾なしに淡々と表現されていることで、
余計に不思議な雰囲気が増幅されていると思います。
ときたま告げられる最期の時までのカウントダウンも、
シンプルだからこそ心に刺さるものがありました。

話にしてもほぼ期待通りの流れ。
主人公の夭折は目次を見た時点で明らかですし、
最初からその死に様に期待して読み始めたのですが、
その最期は爽快感と理不尽さを併せ持つ形でした。
オチにしても目次で予想した通りでしたし、
大きな流れは期待していたそのままな作品でしたね。

ただ、流石に途中の流れは予想できなかったですし、
予想するのは不可能なぐらい理不尽な展開でもありました。
前半は主人公の両親の異常さに恐怖しつつ、
終盤では監督とコーチに怒りを覚えるしかない展開。
どちらも人殺しでありながら覚えた感情が異なるのは、
両親の方はあまりにもぶっ飛んだ動機だったのに対して
監督たちは小さな歪んだ正義のためだったからだろうか。

客観的に見るとハッピーエンドではないのですが、
主人公は割と満足している終わり方特有の
爽快感とやるせなさの混じった読後感が好きな人なら
楽しめる作品なのではないかと思います。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学