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『12月の向日葵』永瀬隼介 感想
12月の向日葵12月の向日葵
(2014/04/30)
永瀬 隼介

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イケイケの新興極道である香坂一と
刑事に憧れる新米巡査である弓削慎二。
一見接点のない二人ですが、実は高校柔道部の仲間で
それぞれの組織で上を目指す野心家という共通点があり、
そんな二人の姿を25年に渡って描く極道小説がこちらです。

面白いのは25年という月日による二人の変化ですね。
最初は慎二に劣等感を持ち強がっていた一ですが
人を殺してしまってからは度胸が据わり、
タフでクールな殺し屋へと成長していきます。
逆に学生時代に優等生だった慎二の方はというと、
一見落ち着いているものの実は一に対して負い目があり、
それを払拭しようとして無茶な努力を繰り返すうちに
じわじわと壊れていくことになります。

こう書くと一の方が優位に見えるんですけど、
20年経って落ち着きを増した一には家族もなく、
慎二の方は一応、嫁と娘を持っているという
決定的とも言える差があるのがなんとも複雑です。
家庭を持ったら持ったで面倒が多いとはいえ、
50歳で独り身というのは想像するだけでしんどいです。

そんな男たちの30代から50代への変化を見せて
年を取ることによる切なさを感じさせつつ、
警察と暴力団の癒着や対立を緊張感のある描写で見せて
ワクワクさせるという、人間描写とエンタメ要素を
見事に両立させた作品だったと思います。
やるせなさと爽やかさの溢れる読後感も素晴らしい。
立場の違う男たちの友情好きにはたまらない逸品でした。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学