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『覇道の槍』天野純希 感想
覇道の槍覇道の槍
(2014/04)
天野 純希

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戦国三好家といえば天下人であった三好長慶が有名ですが、
この本では長慶の父である元長を主人公に据えています。

長慶や松永久秀と比べると元長の知名度はかなり低く、
自分も彼についてはほとんど知らなかったのですが、
いざ調べてみると天下人になる直前まで進んだ
優秀な人物だったということが分かって驚きました。
しかも天下人直前に突如現れた数万の一向一揆によって
討たれるとか本能寺の変を思わせるぐらいドラマチック。
当時畿内最強を誇った三好軍をあっさり殲滅するとか
一向一揆怖すぎでしょ…あいつら無限に涌くからなぁ。

この本はそんな元長の人生を元長・足利義維・細川六郎の
三人の友情をメインにして描いています。
幼い頃に平和な世界を築こうと誓い合った3人。
将軍、管領、そして実働部隊である三好家が一丸となれば
決して実現不可能な未来ではなかったはずです。
しかし時の流れは残酷で、六郎は優秀な元長に対して
次第に嫉妬を募らせ悲劇的な結末を迎えることになります。

基本的には六郎の嫉妬心が悪いという流れではあるものの、
六郎を甘く見て独自の行動を取り過ぎた元長の方にも
原因がないともいえず、人間関係の難しさが感じられます。
かつて潔癖だった元長が最小限の被害での勝利に拘り過ぎて
暗殺や裏工作を多用するようになっていく描写も良い。
こういうダークヒーロー的変化は大好物なのです。
それでいて最後まで六郎を切り捨てることが出来ずに
それが致命傷になってしまうという甘さも大きな魅力です。

脇役としては朝倉宗滴が良かったですね。
戦国初期のチート武将ですけど活躍した時代が早過ぎて
歴史小説での出番はかなり少ないんですよね。
その戦歴に恥じない大物感のある描写が実にナイス。
後は元長子飼いの忍びである久一郎。
三好家で久とくれば…後は言う必要はないでしょう。
侍を憎み続けた彼がようやく見つけた光が元長。
しかしその元長を失ったからにはもう…。

いやはや、最初から最後まで非常に楽しめる小説でした。
戦国時代も大好きなんですけど、最近では室町末期、
戦国初期の混沌とした状況にも魅せられてるんだよなぁ。
あと天野作品の登場人物の行動原理って友情や嫉妬などの
シンプルなものが多いんですけど、それをじっくり
突き詰めていく過程が凄く魅力的なんですよね。
次はどんな人物を料理してくれるのか今から楽しみです。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学