2014/05/16

『うつけの采配』中路啓太 感想

うつけの采配うつけの采配
(2012/02/24)
中路 啓太

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小早川秀秋と並び関ヶ原の勝敗を決定付けた
武将である吉川広家を主人公に据えた歴史小説。
物語は文禄の役真っ最中の朝鮮から始まり、
毛利がどうして関ヶ原でああいった立ち回りを
演ずる破目になったのかを重点的に描いています。

吉川広家といえば父である吉川元春の影響と
関ヶ原での微妙過ぎる立ち回りのせいで
腹芸をこなす猛将というイメージが強いのですが、
この小説での書かれ方はまた全然違いますね。

十分な才能があり小早川隆景から毛利の今後を
託されながらも、本人は帳簿や領地視察が好きな
小市民的な人物として書かれているのが面白い。
毛利を背負うということを真面目に考え過ぎて
何度も逃げ出そうとするところなんかは
今までのイメージをひっくり返されました。

でも一人の人間としては共感しやすかった。
背負う覚悟も投げ出す勇気もないというのは
現代でも通じますし、部下に八つ当たりしたり
優しくしたりする情緒不安定っぷりもまた面白い。
あの関ヶ原での毛利・吉川の静観に至るまでに
胃が痛くなるような綱渡りがあったということが
これでもかと描写されていて、この状況なら
吉川軍の行動も仕方がないと頷ける内容でした。

本作での広家の最大のライバルであり、
もう一人の主人公ともいえるのが安国寺恵瓊。
こいつはこいつで広家とは逆の面白いキャラで
坊主なせいかどこか相手を見下していて、
毛利家は賭けるが自分の命は賭けないみたいな
腐った根性をしているのがたまりません。
この時代は外交僧が当たり前だった時代ですが、
こういう計算高い男は道具としはいいですけど、
御家の命運を託すには危険過ぎる存在。
小早川隆景が警戒していたというのも納得です。

しかし輝元は主人公でも脇役でもボケボケで
もう癒し系マスコットみたいな扱いだなぁ。