2014/04/28

『月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始』小前亮 感想

月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始
(2014/03/24)
小前 亮

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山中鹿之助といえば七難八苦で有名ですが、
これはその息子・新六を主人公にしたお話。

著名な父親に対してその息子は何をしたのか。
実は江戸時代の日本で最大の財閥の
始祖になったというからぶったまげました。
これはある意味父親を超えてるのでは?

鴻池財閥というと今でこそ影が薄いですが、
三菱東京UFJ銀行の前身である鴻池銀行の
名前はちらっと耳に挟んだことがあります。
明治維新以降は衰退してしまったようですが、
それでもその功績の大きさは揺るぎません。

本作の主人公・新六は鹿之助の息子という
恵まれた立場にありながらも武士を捨て、
商人として生きることを決意します。
もっとも、恵まれたといっても鹿之助は
息子とほとんど会わずに死んでいますし、
残されたのはネームバリューだけですけど。

しかしそのネームバリューすら使わず
商人として閃きと度胸で生きていこうとする
新六の生き様は実に爽快感があります。
酒を作るからには日本一を目指し、
更にそれだけに飽き足らず酒の見た目や
輸送の方法まで凝りまくるその拘りは
見習うべき…と思いつつも一歩間違えれば
現場を混乱させる危うさも感じられたり。
まあ、そういう賭けに出て勝ったから
大成できたのもまた事実なのですが。

今まで軍記物の多かった小前さんの新境地。
作家としてますます深みを増しつつある
小前さんの今後の活躍が楽しみです。