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『安禄山』塚本青史 感想
安禄山安禄山
(2012/02/01)
塚本 青史

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安禄山といえば、唐が滅びる遠因となった
安史の乱の首謀者として有名なのですが、
この本での安史の乱の描写は僅か20ページ。
それ以外の全ては安禄山の生い立ちから
反乱に至るまでの描写に費やされています。

ソグド人と突厥の混血人種である安禄山が
愛嬌と計算高さで次々と有力者に取り入って
一身出世していく姿には爽快感がありますね。
異民族が入り乱れる混沌とした辺境で
巧みに生き抜く強かさは実に頼もしい。
それでいていい大人が赤ちゃんの真似をし、
それで嫌悪感より好感度が増えるという
天性の愛嬌には羨ましさすら覚えます。

ただ、この本を読んでいると彼の本質は
武将よりも商人だったような気がしますね。
ただひたすら儲けを追求していくうちに
この時代では一番儲かる節度使に辿り着き、
巨大な権力を手にしてしまったが故に
謀反を疑われて、自分の命を守るために
稀代の叛逆者として動いてしまったような。
玄宗が楊国忠をしっかり押さえていれば
この時代の名臣として名を残したかも?

ただ、損得のためなら騙し討ちでも
積極的に行うところなんかはやはり悪役か。
この本では楊貴妃と男女関係にあったという
説を取っていますが、描写はあっさりなので
大勢に影響があったようには見えませんね。
まあ塚本さんの作品ではこういうところを
さらっと流すのはいつものことなんですけど。

ほんの少し巡り合わせが異なれば
冷徹な大商人として大成したであろう人物が
こういう結末を迎えてしまったと考えると、
運命の悪戯を感じずにはいられません。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学