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『怪物』福田和代 感想
怪物 (集英社文庫)怪物 (集英社文庫)
(2013/05/17)
福田 和代

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「死の匂い」を感じることの出来る刑事・香西が
とある事件で知り合った青年・真崎と関わるうちに
ズブズブと深みにはまり込んでいくサスペンス小説。

この「死の匂い」という設定は面白いですね。
殺人現場では濃厚な匂いが感じられるおかげで
場所によっては一発で犯人が分かるものの、
それ以外の実物証拠が見つけられない場合は
犯人が分かっていても逮捕することが出来ない。
犯人が分からないのと、犯人が分かっていても
逮捕できないのではどっちがきついんだろう。

一方の真崎はあらゆる意味で淡白。
最初は香西の敵役なのかと思っていたのですが、
実際は香西を映す鏡のような存在というべきか。
殺人者ではあるものの、彼の香西に対する分析は
頷ける部分が少なくなかったりします。
真崎は淡白であるが故に何を言われても冷静で、
結果的に香西ばかりがダメージを受けることに。

子供を失ったこと、退職して生きがいを失ったこと、
「死の匂い」の理解者がいないことなどを考えると
ラストの香西の変心は分からなくもない。
ただ、心変わりまでの心理描写がもっと深ければ、
もっと心を抉る作品になったんじゃないかなぁ。
そのせいで「怪物」という表現の説得力も薄い。
理屈では分かっても共感し辛く、劇的というより
突飛な印象になってしまったのが惜しいです。
様々な要素が絡んで二転三転するストーリーや
どこか空虚な雰囲気のある結末は好きですけどね。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学