2013/09/04

『光秀耀変』岩井三四二 感想

光秀曜変光秀曜変
(2012/11/17)
岩井 三四二

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本能寺の変の原因は光秀の老人ボケだった!?
という面白い発想で書かれた歴史小説。
これはもうアイディアの勝利でしょう。

切れ者だった光秀も寄る年並みには勝てず
少しずつボケ出してきたというのが事の発端。
人の名前や出来事が覚えられなくなり、
それでも簡単には引退できないというのが
大名という立場の厳しさか。
跡継ぎが幼ければそれを理由に領地を
召し上げられても文句が言えないですし。

それでも多少の失敗は持ち前の才覚で
乗り切ってきた光秀ですが、信長という
主人の前では少しの失敗でも命取りになる。
もっとも、この小説の信長は短気とはいえ、
謀反を起こされるほど極悪ではないです。
むしろ悪あがきして細かい失敗を積み重ね、
しかも失敗したことすら忘れてしまっている
光秀の方に問題があったという書かれ方。

ボケ老人特有の被害妄想と信長という
短気な主人の相性は最悪でしたね。
信長にとってはいつも通り切れただけでも
今の光秀にとっては凄まじい恐怖。
挙句の果てにはもう殺すしかないと
思い込んで本能寺の変へと突入と。

家康接待や愛宕神社のおみくじといった
メジャーなエピソードも上手くボケと
繋げているのには感心させられました。
エピソード自体は変わっていないのに
光秀がボケていると分かるだけで
こうも違って見えてくるとは。
これもまた歴史小説の醍醐味の一つでしょう。
奇抜な発想を上手く生かした作品でした。