2013/06/07

『灰色の虹』貫井徳郎 感想

灰色の虹灰色の虹
(2010/10)
貫井 徳郎

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貫井さんらしく全く救いのない作品。
ストーリー自体は面白いんですけど先行きが
不穏過ぎて一時読むのを中断していたのですが、
返却期限が迫っていたので何とか読破しました。

7年前に冤罪で投獄された青年。
家族も婚約者も失った彼は釈放された後に
事件の関係者を次々殺していくことに…。
という感じで、ジャンルとしては冤罪物です。

一応、ラストにどんでん返しはあるのですが、
それ自体は中盤の伏線で簡単に分かるはず。
あからさまと言ってもいい手がかりがあります。

ただ、この物語の本質はトリックよりも
冤罪に追い込まれるまでの心情描写でしょうね。
刑事、検事、弁護士、裁判官、目撃者。
全てが敵に回って冤罪に追い込まれる絶望感。
各々は決して悪人とは言えないのですが、
日常の延長線上として雑に事件を扱った末に
一人の人間の人生が破滅してしまうという悲劇。

それぞれの人物にも感情移入できますし、
だからこそ自分が冤罪を生み出さないとは
言い切れないところにも怖さがあります。
一般人としては目撃者になる可能性が高いかな。
軽い気持ちで証言せず、分からないことは
分からないと言う勇気を持つ必要があります。
といっても警察の証人尋問は厳しいとか。
もし機会があったら気合を入れて対応せねば。

テンションを落としたい人にはお勧めの一冊。
いや面白いんですけどね、きっつい。