2013/06/04

『ラットマン』道尾秀介 感想

ラットマンラットマン
(2008/01/22)
道尾 秀介

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仕掛け重視のミステリ小説。
姉の死、恋人の死という事件について、
次々と見方を変えていくことによって
読者を真相から遠ざけていくという構成です。

外野の思い込みによって読者の誤解を
誘うという作りは叙述トリック物と同じ。
ただ、この作品は仕掛けの数を増やすことで
最後の着地点を読めなくしています。
これ系は叙述トリックだと言っても
決定的なネタバレにならないので少し気が楽。
たまにあるパターンですけど、私としては
作者に振り回されるこの感覚は好きですよ。

過去の姉の死と現在での恋人の死という
二つの事件を並行して考えているのに
特に戸惑うこともなく読めましたね。
視点変更も多いのに綺麗に纏まっている。

姉の方は父の介護や家庭問題、恋人の方は
恋人の妹に惹かれる主人公という恋愛問題が
メインで差別化されているのも良かったです。
両方ともドロドロした設定ではあるのですが、
文章がしっとりしているせいかあまり暗くなく
読後感はちょっと切ない感じでしたね。

事件も真相も地味なのですが人物描写は
丁寧ですし、仕掛けも凝っていて面白かった。
派手な展開を求めず綺麗に騙されたい人には
お勧めできる作品だと思います。