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『始皇帝』塚本青史 感想
始皇帝 (講談社文庫)始皇帝 (講談社文庫)
(2009/08/12)
塚本 青史

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タイトル通り、始皇帝を主人公にした一冊。
塚本さんの小説は史実に対する派手な
アレンジは少ないのですが、主人公補正も
少ないところが何気に好きだったりします。

頭脳明晰ではあるものの性格の歪んでいる
主人公が、晩年腐っていくという展開は
塚本さんの「煬帝」と同じ流れですね。
ただ、始皇帝の性格の毒気が非常に強い反面、
他の人物が極端に薄いところも似ています。
呂不韋ですら商人Aみたしな性格ですし。

塚本さんは范雎が嫌いなのか、毎回作中で
ボコボコに叩いているような気がします。
個人的には范雎も好きだったりするので
ここはちょっといやーな感じを受けます。
復讐に全てを賭ける男って渋いじゃないか。

始皇帝の晩年には必ず絡んでくる方士。
こんな詐欺師集団に騙されるとは始皇帝も
大したことがない…と思わなくもないですが、
現代でも似たような騙され方をする人が
数多くいるので一概に馬鹿には出来ません。
この手の話は語り手の技量次第でいくらでも
説得力を持たせられるんじゃないですかね。

秦を一大帝国へ押し上げた政治的手腕と
晩年の暴走の対比こそが始皇帝の真髄。
後書きにある「スリリングで扇情的で、
威圧的で絶望的な面白み」という表現は
この本の内容を的確に現していると思います。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学