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『義烈千秋 天狗党西へ』伊東潤 感想
義烈千秋 天狗党西へ義烈千秋 天狗党西へ
(2012/01/27)
伊東 潤

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幕末、尊皇攘夷運動の先駆けとなった
天狗党の旗揚げから最期までを描いた一冊。
天狗党の乱というと日本史の教科書でも
名前だけが出る程度の扱いですがそこは
伊東さんらしくキッチリ掘り下げています。

主人公サイドである天狗党ですが、
思想面では美しく描写されているものの、
その反面政治力の無さは致命的という印象。
主人公格である藤田小四郎はかの有名な
藤田東湖の息子というサラブレッドですが、
若いだけあって随所で甘さが出ています。
その結果、敬幕を目指していたはずなのに
いつの間にか幕府から討伐されるように
追い込まれていく流れが実に歯がゆい。
伊東さんは主人公の未熟さを描写するのが
非常に上手く、それ故に読んでいて辛いです。

「乱」と表現されているので戦うだけかと
思っていたのですが、実はそれ以上に
京都への旅路の方が凄絶だったという罠。
最初のページの行軍地図を見ただけで
うわぁ…となること必至じゃないでしょうか。
本文中でも敵襲だけでなく寒さや飢えに
ジワジワ追い詰められていく様子が
描写されててこれまた読むのが辛いところ。

そんな苦難の道を乗り越えて辿り着いたのが
罪人として斬首されるという結末。
途中立ち寄った村の人々や加賀藩の面々など、
同情的な立場の人間も少なくなかったのが
少しでも救いになったはずだと思いたい。
僅か数年後に幕府が崩壊することを考えると
正にタッチの差で明暗が分かれたんですよね。
水戸藩という当時では先進的だった藩が、
維新に先駆けてその中心人物のほとんどを
失ったというのは皮肉としか言えません。

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