2012/11/10

『人間の尊厳と八〇〇メートル』深水黎一郎 感想

人間の尊厳と八〇〇メートル人間の尊厳と八〇〇メートル
(2011/09/29)
深水 黎一郎

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深水さんってメフィスト作家だったんですね。
メフィスト作家増え過ぎてもう誰が誰やら。
そんな深水さんの短編集です。

・人間の尊厳と八○○メートル
とある酒場に入った主人公がそこにいた男から
800メートル競走に誘われ…という掴みが上手い。
なんで800メートル?という当然の疑問に対して
量子力学を使って説明するのがまた上手い。
そして長々とした説明が繋がるオチもお見事。
演説系短編小説の見本のようなお話ですね。

・北欧二題
北欧での日常の謎2つの詰め合わせ。
詰め合わせだけあって印象は薄めかな。
前半のオチは見事でしたけど後半の話は
どこかで見たような…と思わなくもないです。

・特別警戒態勢
犯人よりも動機に重点を置いた短編。
登場人物も少なく犯人も分かっているのですが
その動機の意外さで魅せるのが目的ですね。
といっても個人的には動機の方も
読めてたので意外性はなかったのですが、
ほのぼの出来たのでこれはこれで良し!

・完全犯罪あるいは善人の見えない牙
完全犯罪を狙った嫁が見事に夫の始末に成功。
状況的にはどう見ても自然死。
あとは自分さえ黙っていれば絶対バレない。
そんな状況を覆したのは果たして……
という感じのトンチ小説に近い内容です。
なるほど!と思いましたけどね。

・蜜月旅行 LUME DE MIEL
新婚旅行でパリに行った夫婦。
しかし夫がパリ通なせいかやたらとドヤ顔で
パリの薀蓄を述べまくるのが滑稽ですね。
まあ、自分の得意分野を語る時ってこういう
ウザさを発揮してしまうのが人間ですが。
それに対する嫁の反応は…とここからがオチ。
作者的には人間の行動の読めなさを
謎として扱ったミステリーらしいですが、
雰囲気的にはミステリーっぽくないかなぁ。
でも小話としては非常に面白かったです。