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『南海の翼 ─長宗我部元親正伝』天野純希 感想
南海の翼 ─長宗我部元親正伝南海の翼 ─長宗我部元親正伝
(2010/11/26)
天野 純希

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一時とはいえ四国の王となった
長宗我部元親を主人公にした歴史小説。
「南海の翼」というタイトルからは爽やかな
印象を受けますが、実際の内容は結構重いです。
他にも長宗我部元親を主人公にした小説では
司馬遼太郎さんの「夏草の賦」がありますが、
あちらが元親の晩年をさらっと流したのに比べて
こちらはガッツリ書いているのが大きな違い。

幼い頃から姫若子として侮られていた元親は
初陣で奮戦を見せ付けたことで認められ、
家を継ぎ領土の拡大へと邁進していくことに。
しかし瞬間的なヤケクソが評価されたとはいえ
元々繊細だった元親の神経は血を血で洗う
闘争によって徐々に削られていき、最終的には
晩年の心神喪失状態へと繋がっていきます。
元親と秀吉の対面シーンは夢が破れた男の
名シーンとしてもっと広まるべきだと思う。

その様子を奸臣として名高い久武親直の
視点から読ませるという発想がまた面白い。
久武親直の悪評も元親の罪を被ったからという
説がありますがこの小説では正にその通りの
展開で、元親に忠実だった彼が最終的に
貧乏くじを押し付けられる様子が実に辛い。
後継問題のとばっちりで息子たちを失い
絶望するその様子が信親を失った元親との
対比になっているのもよく考えられています。
あと仙石にフォローが入ってたのも好印象。
強引ですけどこういう理屈付けは好き。

正直、なかなか欝展開ばかりな小説なので
万人にお勧めするのは難しい気もしますが、
あの晩年も含めて元親という人物が好きなら
満足の出来る一冊ではないでしょうか。
私としてはもうたまんねぇって感じでした。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学