2012/02/18

『北天蒼星 上杉三郎景虎血戦録』伊東潤 感想

北天蒼星  上杉三郎景虎血戦録北天蒼星 上杉三郎景虎血戦録
(2011/04/27)
伊東 潤

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悲運の武将・上杉景虎をメインにした一冊。
上杉景虎というチョイスの時点でネタバレですが、
この話はやるせないバッドエンドで終わります。
更に景虎視点ということもあり景勝・兼続サイドは
徹底的に悪役として描かれているので景勝側が
好きな人は読まない方がいいかもしれません。

北天蒼星というかっこいいタイトルを見ると
景虎が大活躍する話かと思ってしまうのですが、
実際はそんなことはなく真面目な理想主義者である
景虎がじわじわと追い詰められていくお話です。
一時は後継者争いで有利な立場にありつつも、
上杉家から見ると外様な立場であるという遠慮や、
景勝の善意や武田勝頼の援護を信じようとして
全てが後手後手に回っていくその様子は見ていて
非常に歯がゆく、イライラさせられる面もあり。
結末が分かっているだけに、もっと必死になって
汚い手段でも何でも使って欲しいぐらいです。

とはいえそれは結末を知っているから言えること。
直属の配下もない景虎としてはなんとか反景勝派の
ご機嫌を窺いながら戦っていくしかないわけで、
そんな状況をどうにかしろと言うのも酷でしょう。
理想だけではどうにもならない現実というものを
これでもかと思い知らせてくれる内容でした。

一つ、良改変だと思ったのは最後まで景虎に従った
堀江宗親の裏切りをなかったことにしたことですね。
この裏切りを勝者である景勝側による戦後の捏造とし、
実際は宗親が景虎に忠義を尽くしたとすることで
僅かながらでも景虎に救いを与えています。
まあそのせいで景勝がますます悪者になっていますが。
上杉憲政・道満丸の最後にしても
「おのれ景勝許さん!」って感じですしね。
内容については景虎贔屓過ぎるとは思いますが、
小説としては最後まで面白く読むことができました。