2012/02/15

『重耳』宮城谷昌光 感想

重耳(下) (講談社文庫)重耳(下) (講談社文庫)
(1996/09/12)
宮城谷 昌光

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春秋五覇の一人である文公が主人公の一冊。
重耳という字面は妙なインパクトがありますね。
一見ふざけているように見える名前でありながら
偉人の名前として奥深さがあるような印象もあり。

重耳というタイトルにはなっているものの、
その内容は宮城谷作品らしいと言いましょうか。
まずは重耳の祖父や父の時代から晋という国の
状況から始めていて、これがまた非常に面白い。
重耳の祖父・武公の戦いによって再統一された晋。
それが重耳の父・献公の後継者選びの失敗によって
内乱状態になってしまうのが何とも歯がゆいです。
重耳といえば放浪が有名ですが、そこへ至るまでの
流れがしっかり書かれているのがいいですね。

重耳自身の人物描写も良かったです。
この本から受ける重耳の印象は愛すべき凡人。
切れ者っぽさは皆無ですが、正論を聞かされたら
素直に頷いたり、逆に酷い目に会わされたことを
ずっと忘れなかったりと実に普通の人間っぽい。
介子推を逃してしまった至らないところも
むしろ普通っぽさを強調しているように思えます。
斉でそこそこ豊かな生活をしているうちに
実家のことがどうでもよくなるところも実に凡人。

そんな重耳と彼を支える忠臣達の関係が面白く、
平凡さもとことんまで貫けば大成できるのかと
妙に感心させられる内容となっています。
もちろん周りに優秀な人材がいて、更に彼らから
尽くされるだけの愛嬌が必要なんですけどね。