手を出したものの感想を書き溜める場所
『疾き雲のごとく~早雲と戦国黎明の男たち~』伊東潤 感想
疾(はや)き雲のごとく~早雲と戦国黎明の男たち~疾(はや)き雲のごとく~早雲と戦国黎明の男たち~
(2008/07/11)
伊東 潤

商品詳細を見る

北条早雲と同時代に関東で活躍した6人の武将達、
太田道灌、上杉定正、足利茶々丸、大森氏頼、
今川氏親、三浦道寸の物語を描く短編集です。

それほどマイナーな武将チョイスではないですし、
ちょっと歴史に詳しい人なら名前を聞いただけで
話のあらすじなどは分かってしまいそうですが、
そこは流石伊東さん、史実を上手くアレンジして
読者を飽きさせず最後まで楽しませてくれました。

基本的には各武将の描写に重点を置きつつその裏で
謎の僧侶・宗瑞が暗躍するという展開なのですが、
各武将からの視点だけでなく馬丁や仏師のような
下層の視点もあって作品にメリハリを与えています。

繁栄から滅びまでしっかり書く伊東さんだけあって
切ない終わり方が多いのは戦国時代の宿命か。
道灌、定正主従のどちらもが自らの才に溺れて
滅んだのは皮肉ですし、最期まで空回りを続けた
茶々丸の最期は滑稽でありながら哀れでもある。
三浦一族の最期は様々な小説で読んでいますけど、
この本での散り様は爽やかさすら感じました。
大森氏については仏師視点という特異性もあって
普通の戦国物とは違った雰囲気なのが面白い。
今川氏親の物語は唯一明るい雰囲気なのですが、
最後の最後に戦国大名としての今川氏の結末を
きっちり付け加えるところが伊東さんらしいです。

滅びの美学というほど押し付けがましくはなく、
適度に味付けして読者の感じ方に任せるという
上品な切なさの感じられる短編集でした。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学