2012/02/27

『山河果てるとも』伊東潤 感想

山河果てるとも山河果てるとも
(2008/06/28)
伊東 潤

商品詳細を見る

織田家による伊賀攻めを扱った歴史小説。
当事の伊賀には有名武将もいなかったこともあり
戦国時代の中では地味な地域という印象ですが、
この時の殲滅戦については少し歴史に詳しい人なら
知っていてもおかしくない出来事だと思います。

この本の面白いところは当事閉鎖社会であった
伊賀の風土について書いているだけでなく、
そこへ暮らしていた人々がこの伊賀攻めによって
どう変化したかまで書いているところでしょう。

功名のために伊賀を裏切る者もいれば伊賀を捨て
広い世界へ向かって歩き出す者もいますし、
廃墟と化した伊賀の復興に力を尽くす者もいる。
メンタル面が全体的に現代人っぽい気もしますが、
それぞれの心情描写が丁寧だったこともあって
読んでいて非常に感情移入しやすかったです。
青春物と言うには殺伐とし過ぎていますが、
生きるか死ぬかの日常だったこの時代の若者達は
こういう青春を過ごしていたのかもしれません。

一つの共同体が滅ぶに至っての混乱と絶望。
そしてそこから生まれる希望を史実に絡めて
見事に書き切った爽快な歴史小説だと思います。