2011/12/19

『新徴組』佐藤賢一 感想

新徴組新徴組
(2010/08)
佐藤 賢一

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幕末といえば京都の新撰組が有名ですが、
こちらは江戸の新徴組をメインにした小説です。

主人公は新徴組組員にしてかの沖田総司の義兄である
沖田林太郎と、幕府軍屈指の名将である酒井吉之丞。
マイナーな人物が好きな人には堪らないチョイスです。

作中での林太郎は剣の腕はあるものの、天才肌の総司と
比べるとごくごく一般的な人物として描かれています。
弟である総司と息子が危ないことに巻き込まれないかを
ひたすら心配する姿は気のいい親父さんというイメージ。
理想に生きた新撰組とは違い、ただ家族のために働く
サラリーマンという感じなのは身近に感じられました。
そういう生き方を総司や息子からセコイと責められて
凹んだり怒ったりする姿も非常に共感しやすいです。
こういう凡人的な悩み描写は佐藤さんの真骨頂でしょう。
だからこそ終盤での爆発に燃えるのですが。

もう一人の主人公である酒井吉之丞も面白い。
天才的な戦術家でありながら理想主義者でもあるという
林太郎とは対照的な人物になっているのが上手いです。
尊皇攘夷という主義以前に薩長軍が汚いから許せず、
武士として正々堂々戦い抜こうとする姿は美しかった。
官軍に押されまくる奥州同盟の中で庄内藩だけが吉之丞の
指揮の下で勝ちまくるというチートな話になっていますが、
ほぼ史実通りなんだから凄まじいにも程があります。

新撰組と比べた新徴組、会津藩と比べた庄内藩という
ちょっと地味な二つの要素を見事に結びつけた快作。
読後感も非常に爽やかで幕末好きにはお勧めな一作です。