2011/12/15

『戦国鎌倉悲譚 剋』伊東潤 感想

戦国鎌倉悲譚 剋戦国鎌倉悲譚 剋
(2011/02/25)
伊東 潤

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独自の解釈を交えながら戦国時代を描き続けている
伊東潤さんの戦国譚シリーズのうちの一作です。
この作者さんの作品は毎回悲劇的な展開でありながら
それでも必死に生きる登場人物の姿が非常に魅力的。
今回も悲譚というタイトル通り厳しい展開でしたけど、
各人物の激しい生き様には胸を打たれました。

今作での主人公は後北条氏の一門である北条氏舜。
北条氏舜と言われてもそこらの戦国好き程度では
聞いたこともない名前ではないでしょうか。
かく言う私も氏規ぐらいまでは分かるのですが、
氏舜に関してはまったく知りませんでした。

読後にWikipediaを使って調べてみたところ、
この氏舜という人物は実在こそ確かであるものの、
それ以外ほとんど資料の存在しない人物なんですね。
そこを逆手に取ってその人生を大胆に想像しつつ、
史実を絡めて補強している手腕はお見事でした。
個人的にはこの本を読んでから氏舜について調べると
面白い発見があると思うので先に読んだ方がいいかも?

武家の名門に生まれながら武道より書物を愛した氏舜。
それでも武士としての名誉を捨てきることも出来ず、
愛する女や領民を守りたいという思いもあるという
欲張りで迷い多き主人公として描かれていますが、
どの感情も人間としては当然のものであるだけに
感情移入しやすく、だからこそ読んでいて苦しい。
こういう複雑な痛さは伊東さんの持ち味だと思います。
このグッとくる感じ、癖になります。