2011/08/09

『太公望』宮城谷昌光 感想

太公望〈下〉 (文春文庫)太公望〈下〉 (文春文庫)
(2001/04)
宮城谷 昌光

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タイトル通り、太公望が主人公の小説。
私が太公望という人物をはじめて知ったのはフジリューの
漫画版封神演義でそこから小説版も読んだのですが、
今回のは古代の政権交代を描いている歴史小説です。

封神演義はバリバリのファンタジー路線でしたけど
こちらはかなり王道な革命物語になっていますね。
商の軍によって自らの属していた部族を皆殺しにされた
主人公・望が次々と仲間を得て革命を成すという物語。
復讐に捕われた望が剣の修行や人との出会いによって成長し、
公平な国を作るという大きな目的に目覚める流れも気持ちいい。
作中での望は武術も戦略も人格も良しという無敵キャラですが、
割とピンチが多いので最後まで楽しむことができました。
特に終盤の一大決戦への流れの緊迫感は凄いです。
勝つと分かっていても複雑で速い展開に夢中になれます。
「楽毅」もそうですけど主人公が無敵キャラでも
物語として面白いのが宮城谷さんの上手さだと思います。

ただ、部下キャラが多い割にそれぞれの活躍が少なく
印象が薄いのは共通する欠点でもありますね。
まあ、それぞれの見せ場とかやりだすとそれこそ
少年漫画臭くなってしまって雰囲気が壊れそうですけど。
商の紂王や箕子、北の鬼公や周の文王、武王といった
サブキャラの描写は充実しているので不満は少ないのですが。

その他、神と生贄を重視した商から人と法を重視した周へと
徐々に時代の流れが傾いていく様子が面白かったです。
神秘主義な古代文明にはロマンがありますが、
それが滅んでいく様子もまたロマンがあると思います。
平和が一番だと分かっていつつもこういう劇的な交代劇を
この目で見たいと思ってしまうのが困るところですね。