2010/09/08

『青銅の悲劇 瀕死の王』笠井潔

青銅の悲劇  瀕死の王青銅の悲劇 瀕死の王
(2008/07/25)
笠井 潔

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笠井潔氏の矢吹シリーズ新作。
ではあるもののジャンル的にはアンチミステリか。
あるいはミステリ評論。

ボリュームが凄くて人が殺せそうな厚さですが
小説としてのエンタメ性は放棄してますね。
登場人物が集まりひたすら推理を重ねていく展開は
虚無への供物を思わせるものの、ストーリー自体はまったく
転がらないので読者としてはただただストレスが溜まります。
まあイラッとしたら作者の思い通りぽいですが。

普通なら最後にどんでん返しがあるんですけど
それを否定するのがテーマなのでどうしようもない。
犯人の自白の引き出し方は面白かったです。
探偵としては失格ですが探偵物じゃないからいいのか。

話の展開よりも笠井氏の本格推理に対するモヤモヤ描写が
メインという点でやはり評論に近いんだと思います。
ただ、学生運動や山の民などについての薀蓄は
よく見るネタとはいえやっぱり面白いです。

キャラ感想としてはナディア落ち着いたなぁと。
おばさんに片足突っ込んでる年齢になった今では
探偵オタだった過去は黒歴史にしたいようで。
影のある女性としてちょっと色気が出てきたかな。

エンタメとしては限りなく微妙ですが
ミステリ論としては結構面白かったです。
ミステリではなくミステリというジャンル自体に
興味がある人なら意外と楽しめるかも?