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2019/10/12

『ゆるキャラの恐怖 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活3』奥泉光 感想

ゆるキャラの恐怖 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活3
奥泉 光
文藝春秋
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ダメダメ准教授クワコーシリーズの新作です。

今回はゆるキャラコンテストの話と地下壕の話。
例によってダラダラと話が進むのでマンネリを感じつつも
面白くないわけでもないので最後まで読みました。

ゆるキャラの話はコスプレの話から発展して
艦これまでネタにしていたのには驚きましたね。
流石は奥泉さん、興味の範囲がお広い。
脅迫状が届いて色々な事件が起こったから
犯人を調べてみると、実は複数の事件が絡み合って
複雑に見えていたというオチはミステリーらしいです。

地下壕の話は本筋の学内権力闘争の話から
キノコの話にズレていくのが面白かったですね。
話をややこしくしている原因がキノコ好きたちの
ケチ臭さというのもこのシリーズらしい。
エイプリルさんは新レギュラーになるのかな。

しかし学内教授陣の中でのクワコーの評価が
ジワジワ上がってますけど、果たして今後どうなるのか。
そもそもこのシリーズのゴールは一体どこなのか。
まあ続編が出る限りは読むつもりですけどね。
2019/10/08

『卜伝飄々』風野真知雄  感想

卜伝飄々
卜伝飄々
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風野 真知雄
文藝春秋
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剣聖として名高い塚原卜伝の老年期の物語。
この作品の卜伝は達人としての完成度を感じさせつつ、
若さを感じさせるところがとても良かったですね。

剣に関しては戦う前にやれることを全てやり、
卑怯とも思えるほどの準備をして勝つ。
それでいて不意打ちも咄嗟の機転で見事にかわす。
圧倒的な強さとはまた違うのですが、
負ける姿を想像しにくいレベルに達しています。

それでいて人並みの欲望を持っているのが面白い。
自分がモテないことを自覚しつつ女性に優しくされると
男女の仲を期待してホイホイついていったり、
まだまだ強くなりたいと武者修行の旅に出たり。
若人のように勢いのある欲望ではないのですが、
何となくこうあればいいな程度の控えめな欲望なところが
経験を重ねた老人っぽさを感じさせてくれます。

個人的に好きな話は「半々猫」と「月を斬る」ですね。
どちらもどこか不思議さの残る話ですが、
現実の不思議な状況には飄々と対応する卜伝も
老いは人並みに嫌がっているところが微笑ましいです。

ガツガツせずそれでいて夢を持ち続けるというのは
自分にとっては理想の老人像でもあるので、
そんな姿を描いてくれたこの作品は非常に楽しめました。
こういう年の取り方をしたいもんです。
2019/10/07

『酔象の流儀 朝倉盛衰記』赤神諒 感想

酔象の流儀 朝倉盛衰記
赤神 諒
講談社
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越前朝倉家末期の勇将、山崎吉家の物語。

赤神さんの作品を読むのは3度目。
前に読んだ2作はどちらも無能な主家に振り回される
配下の物語で、今回もそうかと思っていたのですが。

事実、無能な朝倉義景に尽くす山崎吉家の物語でしたし、
序盤は「またかー」と思って微妙だったのですが、
読み終わってみるとかなり満足度が高い作品でした。

特に上手くなってると思ったのは脇役の使い方ですね。
今作の主人公である山崎吉家は気が優しくて力持ちという
主人公としてはちょっと使いにくい性格ですが、
そんな彼を前波吉継や魚住景固の視点から描くことで
好感の持てる有能主人公として描写しているのは上手い。

脇役の性格を作り込み、そんな彼らの視点を使うことで
これまでの作品よりも深みがある展開になっています。
朝倉家が滅びる前に裏切った二人ですが、
裏切るのも納得な理由をしっかり描写したのはお見事。

朝倉義景と朝倉景鏡は定番の無能と腹黒でしたけど、
そんな彼らにも同情できる部分を作っていたりと、
物語としては非常に読みやすかったです。

デビュー作と比べると着実に成長が感じられた今作。
今後の活躍が楽しみな作家さんですね。
2019/10/02

『東京クライシス 内閣府企画官・文月祐美』安生正 感想

東京クライシス 内閣府企画官・文月祐美
安生正
祥伝社
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東京を舞台に災害と陰謀が交錯するサスペンス小説。

発端は竜巻による変電所の壊滅。
まずこれによって東京で大規模停電が発生し、
それによって発生した帰宅困難者たちを
豪雨洪水が襲うという二段構えの災害となっています。

更に災害の裏では某国による国家レベルの陰謀が進行し、
それに踊らされる官邸のゴタゴタを描くわけですが、
竜巻、豪雨、陰謀と複数の問題への対応が発生するせいで
ちょっとまとまりがなく感じられてしまいました。

安生さんの作品と言えば冒頭からハッタリの利いた災害を
ぶちかまして流れを持っていくのが上手いのですが、
今作の変電所崩壊というのはちょっと地味だったかなと。
災害としては後の洪水が本命ではあったのですが、
そこまで進むと今後は官邸内の陰謀との対決に
描写が割かれてしまうため、読み終えた印象としては
災害も陰謀も薄味になってしまったのかもしれませんね。

とはいえ、暴動に陥りかけた民衆が整然と降下し整列する
空挺団の姿を見て理性を取り戻すというシーンは
美しさを感じさせるクライマックスだったと思います。
2019/09/28

『大友二階崩れ』赤神諒 感想

大友二階崩れ
大友二階崩れ
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赤神 諒
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北九州の雄、大友宗麟が誕生の発端となった
二階崩れの変を題材にした歴史小説…なのですが、
主役となるのは吉弘鑑理、鑑広兄弟であり、
話の軸が二階崩れの変とは少し違うところにあるので、
タイトルに期待して読むと拍子抜けするかもですね。

第一章でいきなり二階崩れの変が起こり、
大友義鑑に属した吉弘兄弟は窮地に立たされるのですが、
普通ならこの危機をどう乗り切るかとなるところが
兄の鑑理が基本的には義を信じるだけで
積極的に行動しないところは賛否が分かれそう。
周囲の苦労のおかげで結果的に救われたような
展開になっているので、爽快感はいまいちでした。

あと、作品的には大友家の二階崩れよりも
吉弘一族の奮闘をメインとして描いているので、
作品のタイトルとしては応募時のタイトルである
「義と愛と」の方が相応しいように感じました。
まあ、そっちのタイトルでは内容が掴みにくくて
手に取ってもらえないのかもしれませんが…。

とはいえ面白くないというわけではなく、
角隈石宗や世戸口紹兵衛といった軍師の暗躍、
吉弘鑑広の戦いといった見せ場はあるので、
作品として退屈するようなことはなかったです。
義に拘って一族を滅ぼしかける鑑理の行動の
受け取り方によって評価が分かれる作品だと思います。