2018/05/24

『問題物件』大倉崇裕 感想

問題物件
問題物件
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大倉 崇裕
光文社
売り上げランキング: 947,469

割とレアジャンルな気がする不動産物件ミステリー。

不動産物件に関する様々なトラブルに隠された真相を探る、
という設定も珍しいのですが、この作品の特徴はもう一点。
探偵役が犬のぬいぐるみの化身(?)である男で、
事件解決のために不思議な力を使いまくるところにあります。

扉を素手で引き裂く、車をパンチで潰すという暴力から
催眠やハッキングといった情報収集能力までなんでもあり。
おかげで情報収集パートのテンポがとても速いです。
ミステリーとしては邪道かもしれませんが、
これはこれで爽快感があるのでありかもしれませんね。

不動産トラブルの真相もなかなか面白く、
居座りやゴミ部屋、幽霊部屋という定番の不動産ネタから
ミステリーらしい真相に繋がる展開はお見事でした。
個人的には幽霊部屋の大仕掛けなのに雑な仕掛けが好き。

ちと惜しかったのは病弱お坊ちゃんの影が薄いところかな。
出番が少な過ぎて有能かどうかすら分からないですし、
犬探偵が入れ込むだけの明確な魅力が欲しかったところです。

型破りな日常ミステリーという感じですが、
不思議パワーでゴリゴリ問題を解決していくような
作品を許せる人なら楽しめるのではないでしょうか。
続編が出ているようなのでそっちも読んでみたいですね。
2018/05/22

『ブラック・ヴィーナス 投資の女神』城山真一  感想


このミス大賞、大賞受賞作。
最初は受賞作だと知らないまま読み始めたのですが、
文章がこなれていてベテラン作家かと思っていました。

前半は黒女神と呼ばれる美女が様々な依頼人の
大切なものと引き換えに、株取引で儲けた資金を
依頼人たちに提供していくというのが基本的な流れ。
依頼人はお菓子屋の社長や歌手の父と面白い設定が多く、
話の方もお金を渡して終わるだけではなく
依頼人に隠された謎に踏み込んでいくといった感じで、
短編として非常に綺麗に纏まっていたと思います。
このせいでベテラン作家なのかと思ったんですよね。

後半は国家規模の経済謀略の話になっていくのですが、
こちらの方は前半と比べると少し大味でした。
黒女神に隠された過去は面白かったのですが、
企業買収阻止の流れはかなり運任せだった感が。
結果的に敵対者だった中国が自滅した印象が強いです。
浮気政治家が痛い目を見たのは痛快でしたけどね。

そんな感じで荒い部分はあったものの、
株取引の説明はくどくならず分かりやすかったですし、
話の方も面白かったので次回作には期待したいところ。
どちらかというと壮大な長編よりも
短編での切れ味が光る作家さんなのかもしれませんね。
2018/05/16

『義貞の旗』安部龍太郎 感想

義貞の旗
義貞の旗
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安部 龍太郎
集英社
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足利尊氏のライバルとして名高い新田義貞の物語。

この作品の義貞はザ・主人公という感じの人物で、
直情型でありながらも正義を重んじ、
自分の意思を貫き通し典型的な主人公タイプ。
出自は貧乏御家人ながらも、その愚直な性格で
少しずつ周りの信頼を得て仲間を増やしていきます。

この義貞の人物像は分かりやすかったのですが、
義貞以外の人物はというとかなりあっさり描写でした。
尊氏や直義は一応ライバルっぽい扱いはされているものの
お互い深い感情を抱くことはなかったですし、
味方である楠正成などにしても妙なほど扱いが軽い。
折角面白い時代なんですから義貞の恋愛描写を入れるより
他の群雄の扱いに力を入れて欲しかったですね。

義貞の最期についても越前に向かった後は
地の文1ページだけで終わらせたのは物足りない。
ここは無念の死にしても満足しての死にしても
しっかりと描写して欲しかっただけに残念でした。

義貞の冒険譚としてはある程度楽しめたのですが、
この時代の複雑な状況を生かせたかといわれると微妙で、
義貞自身もシンプルな人格であっただけに
あっさり気味な読後感が残る作品でした。
義貞が新田一族だけでなくもう少し他の人物たちと絡めば
もっと味わい深い作品になったかもしれません。
2018/05/13

『ホームズ四世』新堂冬樹 感想

ホームズ四世
ホームズ四世
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新堂 冬樹
講談社
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シャーロックホームズの曾孫が主人公である探偵小説。

新堂冬樹さんのミステリーって久々に読む気が。
一時はバイオレンス系をよく読んでいましたけど
最近はとんとご無沙汰だったのでなんだか新鮮な気分です。

ホームズの曾孫が女好きのホストというのは面白い。
ただ、女好きで美女を見ると軽率に口説く反面、
一人の女と付き合っている間は他の女とは
セックスしないというのは中途半端な設定だったなと。
どうせなら節操なく女を食いまくるぐらいした方が
探偵兼性格破綻者として面白かったような気がします。

作品の内容としては事件の展開よりも
ヒロインである檸檬との軽快な会話がメイン。
ツンデレ気味な檸檬との会話はテンポがいいですが、
似たパターンのツンが多いので飽きやすい面もあります。
ここももう少し奇抜なキャラ付けが欲しかったところ。

事件自体は二転三転するので退屈はしないのですが、
黒幕バラしを2回やったのは個人的には微妙でした。
真相判明…とみせかけて、というのが狙いでしょうけど、
またかーという感想の方が強かったですね。

ホームズの孫と先祖の因縁という設定は美味しかったですが、
内容は全体的に軽過ぎた感があって物足りなかったです。
いっそのこともう少し軽くしてラノベとして出した方が
素直に受け入れられたかもしれません。
2018/05/10

『風屋敷の告白』藤田宜永 感想

風屋敷の告白 (新潮文庫)
藤田 宜永
新潮社 (2015-10-28)
売り上げランキング: 935,120

定年退職後の再スタートの仕事として探偵を選んだ
二人の老人が事件を追うまったりとした探偵小説。

全体的に中途半端なのが特徴といいますか。
老人二人が探偵事務所を開いた動機は軽めですし、
初仕事で死体を見つけてシリアスになる…ということもなく
マイペースに真相に向かって調査していきます。
重過ぎず軽過ぎずといった感じで強い魅力はないものの、
事件自体は調査すればするほど複雑になっていくので
だらだらと最後まで読まされてしまいました。

一歩間違えれば途中で読むのをやめてましたけど、
そこをしぶとく読ませたところには老獪さを感じますね。
衝撃の展開!というものはなかったんですけど、
情報を小出しにして読者を釣るのが上手い。
老人二人も内心では結構焦ったりするんですけど、
外面は終始沈着冷静なところはまさに年の功。

ラストにしても事件を解決するというよりは
関係者が上手く治まるように調整したという感じで、
経験豊富なサラリーマン的な着地点と言えなくもない。
探偵の物語というよりは、サラリーマンが難しめの
プロジェクトを成功させる物語に近いかもしれませんね。
探偵小説としては少し物足りなさを感じますが、
他とはちょっと変わった雰囲気は楽しめる作品でした。