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2019/04/25

『洛中洛外画狂伝―狩野永徳』谷津矢車 感想

洛中洛外画狂伝―狩野永徳
谷津 矢車
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戦国時代の画人、狩野永徳の物語。
最近読んだ『安土唐獅子画狂伝』の前作に当たり、
時代としては永徳の少年期から青年期に当たります。
そして将軍、足利義輝の躍進と滅亡の時期でもあります。

前半の永徳は子供らしく親に反抗してばかり…
にも見えるのですが、実際にはその圧倒的才能故に
一流絵師である父親すら永徳少年を理解できないという、
天才として生まれたものの孤独さが描かれています。
この孤独描写は後半や続編でも同じでしたけど、
これだけ一貫して天才性を描いている作品は珍しいかも。

とはいえ、永徳が人としての感情を
持ち合わせていないかというと決してそうではなく、
当たり前の人間らしさを持ちつつも
天才としての絵への欲望を抑えられないという感じ。
ここら辺の周囲と合わない悲しさを持ちつつ、
それでも絵のためなら全てを捨てられるという
複雑な人間描写が面白かったですね。

松永弾正や日乗といった登場人物の結末は
続編で描かれていますが、自らの才を信じる彼らの
若い頃の姿を知ることが出来たのも良かったです。
足利義輝は自分の才を信じ最終的には敗れましたが、
松永弾正もそれと同じ道を進んだと思うと
上手く言葉にできない複雑な感情が湧いてきます。

絵師という立場から戦国時代を描いた本作。
激動の時代を絵の才能で突っ走るその姿、
続編も合わせて、非常に楽しませていただきました。
2019/04/22

『宗麟の海』安部龍太郎 感想

宗麟の海
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安部 龍太郎
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戦国時代の北九州の雄、大友宗麟の物語。

作中時間は宗麟の青年時代から毛利の進行を撃退するまで。
耳川の戦いなどはさらっと流しているので
基本的に大友家の調子が良かった頃の話となります。

この作品の宗麟は優秀ではあるもののやる気にムラがあり、
状況を積極的に動かすことが少ないので、
主人公としては物足りなさを感じる場面は多かったです。
幼い頃から病弱で死が身近にあったため、
どこか厭世的で投げやりという解釈は納得できますが、
それはそれとしてもう少し積極性が欲しかったところ。

しかし当時の北九州の状況も面白いですね。
二階崩れによる大友家のグダグダから始まって
隣国大内家でも内乱が起こって毛利が台頭し、
更にその周囲では島津や尼子も蠢いている。
まあこの時代の日本はどこでも大抵面白いのですが、
宗麟の話はキリスト教の扱いが大きいのが特徴ですね。

ただ、宗教対立について触れられてはいるものの、
ここでも宗麟が優柔不断っぷりを発揮したせいで
あまり掘り下げられずに終わってしまった感が。
ちょっと前に読んだ『大友の聖将』では
宗麟の神に対する思いを結構掘り下げていただけに
この作品は薄味に感じられてしまいました。

決して面白くないわけではないのですが、
耳川の戦い以降も描いてもっと宗麟を掘り下げていれば
より心に残る作品になったかもしれません。
2019/04/09

『信長嫌い』天野純希 感想

信長嫌い
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天野 純希
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織田信長に関わった様々な人物の短編集。
こういうネタの作品も既に数多くある気がしますが、
何度読んでも面白いのがこの時代の魅力ですね。

内容としてはハッピーエンドで終わる物語もありますが、
それ以上に意地を通して満足して終わる物語が多め。
特に三好義継、織田秀信は名門の矜持を見せる内容で、
世間のパッとしない評価を覆す生き様を見せました。
実力とプライドが合っていないと言われればそれまでですが、
それでも足掻こうとする生き様には魅せられます。

名門の出ではないものの真柄直隆の物語も同じですね。
周囲を馬鹿にし自分の力を過信している直隆が
最後に自分の無力さを受け入れ姉川の合戦で名を遺す。
敗れはしたものの、歴史に埋もれるほど無名かと言われると
決してそんなことはなく、僅かでも輝いたことは確かです。

どの話も面白い物語だったんですけど、
ちょっと残念だったのは信長の描写ですね。
なんだかよく分からないけど圧のある信長という描写は
流石にマンネリ化してきたような気もします。
信長が冷酷という定説に対する反論も増えてきましたし、
そろそろ新鮮な信長像も見てみたいところですね。
2019/03/27

『大友の聖将』赤神諒 感想

大友の聖将
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斜陽の大友家を支えた武将・柴田礼能、
またの名を天徳寺リイノの物語。

戦国時代の九州の流れはだいたい把握していたのですが、
立花道雪、高橋紹運あたりならともかく
流石にこの天徳寺リイノという人物については初耳でした。

本作2部構成となっていて、前半ではリイノが
他人を疑い憎むことばかりしていた時代が描かれています
前半のリイノも決して悪人というわけではないのですが、
逆境に陥ると自分に味方してくれる人々のことまで
疑い出してしまうという、人間らしい弱さがあります。
そんなリイノが立花道雪や武宮武蔵といった人間の
無償の優しさに触れて変わっていくところは
人間の可能性というものを感じさせてくれました。

そして後半では立場が逆転するところが面白い。
優柔不断で他人を信用し切れない大友宗麟には
迷いを捨てたリイノの姿があまりにも眩しく映る。
それ故にリイノに対して嫉妬や恨みを持つものの、
リイノのひたむきな忠誠によって少しずつ変わっていく…
と言いたいところですが、変わるのが少し遅かった。
もう少し宗麟の見せ場があれば爽快だったでしょうけど、
変わるまでのダメダメ期間が長過ぎたせいで
リイノの報われなさばかり目立ってしまった感が。
リイノが旧知の武宮と協力して島津を撃退する場面は
熱かっただけに、もう一押し欲しかったところです。

とはいえ、資料の少なそうな柴田礼能という人物を
キリシタンという面から掘り下げて
一人の人間として構築したのはお見事ですね。
この作者さん、つい最近デビューしたばかりですが、
かなりハイペースで作品を出しているので
他の作品も読んでみたいと思いました。
2019/02/28

『安土唐獅子画狂伝 狩野永徳』谷津矢車 感想

安土唐獅子画狂伝 狩野永徳 (文芸書)
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戦国時代の画人、狩野永徳の物語。
一応続き物の2作目に当たりで、前作は足利義輝、
今作は織田信長との関係を描いているのですが、
今作から読んでも普通に楽しめると思います。
というか私も前作を読んでいないのですが楽しめました。

事実上の天下人となった織田信長と、
最高の画人を目指す狩野永徳のやり取りは
ジャンルこそ違えど真剣勝負という感じがあります。
他にも茶の湯を芸術へと昇華させようとする千利休や
天下人を目指して反逆する松永弾正、
後に画人としてライバルとなる長谷川等伯など、
頂点を目指す人間たちが共演しているのは熱いですね。
どいつもこいつもプライドが高過ぎる。

現存しない安土城の唐獅子図への意味の持たせ方も面白い。
妻を失った故にかつて感じていた妻の優しさが絵に宿り、
そこが現存する唐獅子図との違いになっているというのは
いかにも小説的な創作ですが、良い創作だと思います。

家族よりも絵を取るというのは人としてダメな部類ですが、
たった一人で画人の頂点に立ち続けるには
家族もライバルも眼中にないぐらいでいいのかも。
単なる絵の話だけにとどまらず、日本一になるというのは
どういうことかを考えさせられる作品でした。