FC2ブログ
2020/04/22

『信長を生んだ男』霧島兵庫 感想

信長を生んだ男
信長を生んだ男
posted with amachazl at 2020.04.22
兵庫, 霧島
新潮社 (2017-11-22)
売り上げランキング: 422,033

織田信長物語の序盤最大の敵である織田信行の物語。
信行は歴史小説での出番は多いものの、
主人公として扱われている小説を読むのは初めてかも。

この作品の信行は、有能な優等生であるところは
数々の信長小説で描かれてきた人物像に近いです。
ただ根本的に兄大好きであるところが大きな違いですね。
ちょっと病んでるブラコンキャラというのはFGOに近い。
兄の才能に嫉妬しつつもそれ以上に兄大好きというのは
捻くれたブラコン好きにはたまらない性格でしょう。

終盤の展開も面白かったです。
信長を非情にするために自分を殺させるというのは
愛の重い作品では割とよくある展開なのですが、
そこに帰蝶を巻き込んだのは面白い。
子供こそ産めなかったものの信長の母代わりとして
確固たる地位を築いていた帰蝶を信行が殺すことで、
信長が信行を殺すしかないように仕向ける。
信長、帰蝶、信行という仲の良かった三人の関係が
信長の尻を叩くために崩壊していくのがたまりません。
帰蝶早死に説をこう使ってくるのは新鮮でした。

織田信行の最期は信長による暗殺と言われていますが、
その裏にこういう事件があったのかもしれないと
妄想させてくれる、良い作品だったと思います。
2020/04/16

『敗れども負けず』武内涼 感想

敗れども負けず
敗れども負けず
posted with amachazl at 2020.04.16
涼, 武内
新潮社 (2018-03-22)
売り上げランキング: 132,185

歴史の中での敗者たちに焦点を当てた短編集。

いずれの短編も敗者を扱っているため
結末がすっきりしない話が多いのですが、
扱っている人物が珍しいので退屈はしませんでした。
敗者を扱っている割には読後感は重くなく、
短編なので心情を深く掘り下げていないところが
かえって読みやすさに繋がっているのかもしれません。

メインになるのは上杉憲政、板額御前、
龍造寺隆信、足利持氏の子である春王と安王、
そして源頼朝の庶子である貞暁。
長編の主役になれそうなのは龍造寺隆信ぐらいかな。
板額御前なんて歴史小説で初めて見たかも。

どの短編も短い中で各人物にとっての重大事件を
読みやすくさらっと描いていたのですが、
一番読後感が良かったのは貞暁の話ですね。
他の話はただでは負けないという感じであるものの、
結局負けであることには変わりはないのですが、
貞暁の話だけは勝ち寄りの結末です。
頼朝の子でありながら将軍にならないという選択は
一見負け組に見えるものの、自らの生き様を
しっかりと貫いているので読後感が爽快でした。

短編なので読後の達成感は控えめですが、
珍しい人物の話を気軽に読めるのは良かったです。
2020/03/29

『大阪の陣』岡田秀文 感想

大坂の陣
大坂の陣
posted with amachazl at 2020.03.29
岡田 秀文
双葉社 (2019-06-19)
売り上げランキング: 148,258

タイトル通り、大阪の陣を題材にした物語。
大阪の陣については手垢のついた素材ではあるのですが、
家康視点をメインにしつつも他に多数の人物の視点を
挿入することによって、単調にならない構成になっています。

期間としては、関ケ原の合戦終了後から家康が死亡するまで。
この間の流れについては基本的に家康の計算通り。
大久保長安事件のような想定外のイベントはあったものの、
二度の大阪の陣から豊臣家の結末までについては
ほぼ完全に流れをコントロールしていたと言えます。
最後の真田幸村の突撃はちょっと危なかったものの、
裏工作で秀頼を出陣させないようにしたことによって
分厚い紙一重が生まれたことを考えると、
やはり全体として家康の掌の上だった感があります。

あと面白かったのは秀頼のキャラクター性ですね。
小さい頃から他人が何でもやってくれたせいで
他人に任せるのが当然になり、他人に任せろと言われると
鷹揚に頷くことしかできないというのは悲しい解釈。
そんな悲しい人生の中でただ一つ、華やかな死に対する
憧れだけが自分の中で育っていったというのは、
ただただ虚無という感じで見ていて哀れになります。
一軍の総大将としては迷惑極まりないですが。

他にも吉川広家や福島正則、片桐勝元に織田有楽斎、
その他にも大勢の小ネタが挟まり、短いながらも
それぞれの人生が描写されているので退屈しなかったです。
豊臣と徳川の決戦について基本的な流れを知っていても
改めて読みたいという人にはオススメの本かもしれません。
2020/03/22

『英龍伝』佐々木譲 感想

英龍伝
英龍伝
posted with amachazl at 2020.03.22
佐々木 譲
毎日新聞出版 (2018-01-12)
売り上げランキング: 366,627

江戸時代末期に異例の出世を遂げたものの
開国直後に病死した江川英龍の物語。

江川英龍といえば結構マイナーな人物ですが、
彼が作った韮山反射炉は歴史番組ではよく登場しますね。
私自身も彼についてはほとんど知らなかったのですが、
田舎の代官から幕府の最高幹部である三奉行を目指し、
ライバルである鳥居耀蔵の妨害に会いながらも
出世していくという立身物として楽しめる内容でした。

この物語は鎖国開国以前の海外の技術を
受け入れるか受け入れないかがメインですが、
それでもこれだけ前に進まないのだから大変です。
答えを知っている後の世から見ればバカバカしいですが、
当時の人間としては外国の圧倒的技術や
幕府の崩壊は想像できるものではないでしょう。
だからこそ、それを想像できた英龍が
幕府の中枢に入る直前に死亡したのは惜しいですね。

戊辰戦争についてはよく小説でも見るのですが、
その直前をテーマにした作品は少ないので、
色々と新鮮に感じる場面が多い作品でした。
2020/03/18

『計策師 甲駿相三国同盟異聞』赤神諒 感想

計策師 甲駿相三国同盟異聞
赤神 諒
朝日新聞出版
売り上げランキング: 241,582

戦国時代の交渉事を担当した計策師の物語。

計策師ってなんじゃろと思って読み始めたのですが、
春秋戦国時代の縦横家に近い感じですね。
舌先三寸を武器に相手を騙したり乗せたりして
自分の所属する国の利益を引き出すというのが仕事。

主人公である又七郎は切れ者の計策師であるものの、
人を殺すのが苦手で平和を目指すという甘ちゃん。
そんな彼が甲駿相三国同盟を実現させるために
四苦八苦するというのがこの本。
武田信玄、今川義元、北条氏康といった名君が健在で
イケイケだった時機だけに一筋縄ではいきませんが、
様々な障害を乗り越えて実現させることとなります。

小細工を駆使して少しずつ目標に近付いていくのは
面白かったですが、結末がハッピーエンドじゃないのは
個人的にはちょっとガッカリしてしまいました。
バッドエンドが嫌いというわけではないんですけど、
バッドと見せかけてハッピー…と見せかけて
やっぱりバッドという流れはあまり好きじゃない。
作者さんは坂本龍馬的な話をやりたかったようですが、
そこに引きずられ過ぎた感があります。

とはいえ、戦国時代の一大イベントである
甲駿相三国同盟を主軸にした作品は珍しいですし、
その裏の様々な駆け引きを想像させてくれる作品でした。