FC2ブログ
2019/07/09

『特捜投資家』永瀬隼介 感想

特捜投資家
特捜投資家
posted with amazlet at 19.07.08
永瀬 隼介
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 307,885

謎の凄腕投資家と落ち目のフリーライターが手を組み
とあるベンチャー企業に潜む闇を暴く経済小説。

基本的な話の筋は面白かったです。
最初の過去話はよくある悲劇ではあるものの、
金の亡者を作る理由としては納得できますし、
状況が二転三転しながらも少しずつ真実が
暴かれていく展開にはワクワクさせられました。
新型電池で革命を起こすという、今の時代にやれば
いかにも資金が集まりそうな詐欺を扱っているのも良い。

ただ、ご都合主義な部分も結構感じられました。
もちろんどんな話にもご都合主義はあるものですが、
この作品でそれが鼻についてしまった原因は
主人公である記者が有能に見えなかったのが大きいです。

経済初心者の読者に説明するためかもしれませんが、
ニュースで説明されているような基本用語も
知らないというのは流石に記者として勉強不足な気が。
他にも取材対象の科学者にあっさり騙されて
半グレ集団に追い詰められたりと、
凄腕記者にしては隙が多過ぎるように感じられました。

そんな感じで主人公の扱いは引っかかるのですが、
総合的には面白さが勝った作品でした。
コンビ物としてシリーズ化しそうな作品ですし、
もし次が出たら読んでみたいと思います。
2019/06/28

『跡を消す: 特殊清掃専門会社デッドモーニング』前川ほまれ 感想

跡を消す: 特殊清掃専門会社デッドモーニング
前川 ほまれ
ポプラ社 (2018-07-12)
売り上げランキング: 392,051

特殊清掃、いわゆる死人が関わった案件での
後始末を仕事とする会社、デッドモーニングの物語。

今回は特殊清掃を扱った作品ということで
えぐい描写が多いかと思って読み始めたのですが、
覚悟が必要なほどの描写はなかったですね。
もちろんある程度の死体描写はありますけど、
よほどグロ苦手な人でなければ大丈夫ではないかと。

ストーリーとしても単に死体の謎を追うのではなく、
各人が死者に対してどういう態度をとるかという点を
掘り下げていくのがメインとなっています。
毎日死者と向き合う仕事でありながら、
彼ら彼女らの死に様を仕事として割り切るのではなく、
それぞれの今際の際を思って丁寧に弔う。
決して派手な物語ではありませんが、
故人を偲ぶ優しげな雰囲気の漂っている作品でした。
2019/06/09

『完璧なる水晶・葉山編』五條瑛 感想

Perfect Quartz 完璧なる水晶・葉山編
五條瑛
NextPublishing Authors Press (2018-10-13)
売り上げランキング: 114,088

久々の五條瑛さん、久々の鉱物シリーズですが、
久々過ぎてこれまでの作品の内容ほとんど忘れてるなぁ。
とはいえ、この作品は単品でも楽しめます。

今回扱っているのは某北の長男の暗殺事件。
現実でも起こったこの事件の裏で、アメリカや韓国が
どう動いていたかを描く作品となっています。
まだ記憶に新しい事件だけに夢中になれる作品ですが、
テーマがテーマだけに個人出版するしかなかったのかな。

読者は長男が暗殺される結末を知っているのですが、
この作品が始まるのはそこに至るまでの発端、
長男がアメリカに亡命を打診するところから始まります。
亡命の仲介を持ちかけられた主人公の葉山や、
韓国の若き財閥当主はこの歴史的事件を成功させるべく
手を尽くすわけですが、国家の命運を握る者たちは
違った思惑で動いていたためにあの結末に…。

興味深かったのは長男の重要性に対する認識ですね。
長男自身は自分が最高のVIPだと思っていましたし、
葉山、財閥当主も亡命が大事件だと思っていたものの、
各国首脳にとってはそうでもなかったのがこの物語の核。

もともと北朝鮮側は長男の暗殺を考えていていたものの、
既に国内の長男勢力は一掃されていることもあって
それほど積極的に暗殺する必要性はなかったはず。
しかし米中や欧州にとっての長男の価値を再検討した結果、
世界中が彼を庇護する必要がないという結論に達し、
それが暗殺への暗黙の了解になってしまったんですよね。
世界の中での自分の価値の変化というのは
この暗殺事件に限らず普通の会社勤めでもあることですが、
それに気づいて対応するのは案外難しいかもしれません。

最近、年をとってきたということもあって、
こういった時間の流れによる劣化を感じさせられると
他人事とは思えない危機感を覚えてしまいますね。
いや、こんな世界規模の話と比べるのもアレなのですが…。
2019/05/18

『地獄の犬たち』深町秋生 感想

地獄の犬たち
地獄の犬たち
posted with amazlet at 19.05.17
深町 秋生
KADOKAWA (2017-09-01)
売り上げランキング: 327,643

ボリューム的にも内容的にもずっしり重い暗黒小説。

主人公はヤクザ組織にスパイとして潜り込んだ警察官。
しかし海千山千のヤクザたちの信頼を得るため
残忍な殺戮を繰り返しているうちに、
次第に身も心も擦り切れていくことになります。

この主人公の描写がなかなか絶妙で、
最初は犯罪者を憎んで潜入捜査に参加したはずが
ヤクザたちとともに死線を超えていくうちに
仲間意識が芽生えていく流れが自然に描かれています。
最後にロクでもない結末が待っているとしか思いつつも、
先が気になってどんどん読み進めてしまいました。

実際ロクでもない結末だったわけですが、
むしろこの作品の場合はそれが心地よいですね。
これだけ殺しまくってハッピーエンドだと
それはもう後味悪かったでしょうし、
バッドエンドと言っても簡単に終わらせるのではなく
この先苦しみ続ける方向だったのもポイントが高い。

薄汚い殺し合いの中にもキラリと光る友情や愛情があり、
そういう美しさをしっかり見せつつも
ロクでもない地獄であるという主張は譲らない。
そんな作品が読みたいときにはピッタリな物語でした。
2019/04/16

『二重螺旋の誘拐』喜多喜久 感想

二重螺旋の誘拐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
喜多 喜久
宝島社 (2014-10-04)
売り上げランキング: 590,796

二つの視点で進む誘拐ミステリー。
物語の中心にいるのは一人の女の子で、
その女の子と仲のいいぽっちゃり型中年研究員と
女の子の父親の二つの視点から物語が進んでいきます。

父親側の誘拐事件は中編小説としてはまずまずで、
事件の真相のどんでん返しも良かったと思います。
研究者側は少女への思い入れが気持ち悪かったですが、
それも一つの魅力としてこれまた読み応えがありました。

話の仕掛け自体はこの手の物語としては定番で、
二つの視点の間の情報のズレはすぐ分かりました。
それ自体は物語の構成上仕方がない面もあるのですが、
二つの物語が繋がった際のカタルシスが少なかったのは残念。
二つの誘拐事件がそれぞれで纏まっているせいで
謎の少女についての種明かしが蛇足になった感があります。

ラストもロリコン大勝利なのはまあいいのですが、
あまりすんなり大勝利になるのもな…という感じですね。
世間的にはあまりよろしくない関係だけに、
それを吹き飛ばすような展開が欲しかったところです。
いや年の差カップルは好きなんですけど、
それだけに基準が厳しくなってしまうんですよね…。