2018/02/19

『ぼぎわんが、来る』澤村伊智 感想

ぼぎわんが、来る (角川ホラー文庫)
澤村伊智
KADOKAWA (2018-02-24)
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謎の怪異「ぼぎわん」と戦うホラー小説。

まず、ぼぎわんという響きが不気味なのがよい。
平仮名の意味不明な言葉って独特の不気味さがあります。

怪異の接近を現代的な家族問題と絡めたのも面白い。
一見幸せそうな家庭でも現代風の子育て問題を抱えていて、
その隙に怪異が入り込んでくるという理屈は納得できる。
…と見せかけて実際強いのは昔ながらの呪術だったりしますが。

得体の知れない不気味さがよく出ている話ですが、
数々の犠牲者を出しつつも最後に霊能者と大バトルして
何とか勝利する、という話なので読後感は明るめです。
勝利しつつも新たな怪異の芽も描写して
まだ終わっていない感を出すというオチもお約束。

ただ、ラストの大バトルが割とアクション映画的なので
爽快ではあるものの不気味さは薄れてしまったかな。
エンタメとしては面白いんですけど、
ホラーとしては少し評価が下がるところかもしれません。

とはいえ、終盤まで不気味さで話を引っ張る手腕は
とてもこれがデビュー作とは思えないほどでしたし、
ラストの大バトルにしても自分としては楽しめました。
この方の次回作が楽しみです。
2018/02/04

『電王』高嶋哲夫 感想

電王
電王
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高嶋 哲夫
幻冬舎 (2016-12-15)
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プロ棋士と将棋ソフトが対戦する電王戦をテーマにした小説。

…と書くとソフトの進化がメインのように感じられますが、
実際は現役最強棋士とソフト開発者の二人が幼馴染で、
彼らの友情描写がメインになっています。

中盤まではバランスが取れてたんですよね。
幼馴染二人の友情を描写しつつ
最近のソフト業界の流れにも力を入れていて、
人間とソフト両方の可能性を感じさせてくれるような
作品になるかとワクワクさせてくれる展開でした。

それだけに終盤が人間描写に偏ってしまったのが残念。
特にラストの棋士とソフトの対決シーンで
ソフトの代わりに開発者が打ち出したのには呆れました。
将棋から数十年離れていた開発者が打つのは無茶があります。
ソフト開発とはなんだったのか…。

一つ前に読んだ鳴海さんの『全能兵器AiCO』が
あくまで人間とAIの対決に拘ったのとは悪い意味で真逆。
人間と機械の対決では人間に勝って欲しいとは思いますが、
機械を作る人間には機械の可能性を信じていて欲しい。
それをやったのがAiCOで、信じることが出来ずに
サクッと出番を奪ってしまったのが本作です。

ラストの展開が受け入れられるのなら
そう悪い作品ではないでしょうけど、
個人的にはずっこけさせられる展開でした。
2018/01/31

『全能兵器AiCO』感想 鳴海章

全能兵器AiCO
全能兵器AiCO
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鳴海 章
講談社
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無人戦闘機を題材にした近未来SF…というよりは
限りなく現在に近いSFという感じでしょうか。

ディープラーニングを応用して自己進化するAIや、
技術力のある民間企業だけで作ったステルス戦闘機など、
作中で使われている技術は夢物語というよりは
すぐそこにある手の届くものという印象が強いです。
格差社会が生み出したアジアの富裕層がお金を出し合って
中国に対抗する兵器を作らせるという発想も実に現代的。

航空自衛隊の教導隊に所属するエースパイロットと、
教導隊のデータを持つAIの対決というシチュは熱い。
機体の限界機動を行い続ける無人機に圧倒されつつも
定石外しの行動で隙を作って勝つ展開も王道です。
そう簡単に撃てないからこそ世界一の技術を目指す
航空自衛隊というのは誇るべきものですが、
自衛隊という存在の歪さを感じる部分でもありました。

ただ、作品の最後でも匂わせていたように
AIはいくら落とされてもバックアップがあって、
しかも経験値は継続できるという利点があるので
人間が負けるのも時間の問題ではあるんでしょうね…。
無人機動兵器と言われると僕らの世代では
どうしてもガンダムWを思い出してしまうのですが、
ああいう血を流さない戦争の時代はすぐそこなのかも。
恐怖…というほどのものではないのですが、
どこかひんやりとした感触のある小説でした。
2018/01/18

『絶望的――寄生クラブ』鳥飼否宇 感想

絶望的――寄生クラブ (ミステリー・リーグ)
鳥飼 否宇
原書房
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なかなか手の込んだバカミスでした。

日々変態ちっくな研究に熱中する教授の論文が
次々とバカミスに変化していくという本作。
作中作である4本のバカミスは
いずれもお馬鹿なトリックが使われていて、
真面目に読むと分投げたくなること間違いなし。
論文がバカミスに変化してしまった理由もデタラメで、
まさにバカミスの詰め合わせという内容になっています。

主人公である教授自身も変態ではあるのですが、
作中作は更に性描写が多いので好き嫌いは分かれそう。
ただ、基本的に頭がおかしい展開が多いせいで
興奮するよりもむしろ冷静になっていしまい、
バカミスとしてのトリックも落ち着いて楽しめました。

作中のトリックは見たこともないネタというよりは
どこかで見たようなネタだけどバカ過ぎて
使う人が少ないネタという感じですが、
ある程度バカミス知識がある人が読むと楽しめそう。
知識がない人が読むと完全に置いてけぼりにされるか、
それともこのヘンテコなノリにハマってしまうのか、
1000人ぐらいに読ませて統計を取りたいですね。
あ、バカミス嫌いの人には絶対オススメできません。

バカミスを読むのは久々でしたけど、
これほどまで「バカミスだぞ。バカミスだからな!」と
強く主張してくる作品ははじめて読んだ気がします。
これはこれでなかなか楽しい経験でした。
2017/11/30

『ドミノ倒し』貫井徳郎 感想

ドミノ倒し (創元推理文庫)
貫井 徳郎
東京創元社
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重めの作品が多い貫井さんですが、今回はライトな作品。
しかしその出来はというと…うーん?

先にネタ晴らししてしまうとこの作品、
犯人は関係者全員系のオチです。
閉鎖的な田舎で私刑が行われるというシチュは
ホラーやサスペンスではよく見る展開ではあるのですが、
この作品はゆるい雰囲気のバカミスなのが特徴ですね。

ただ、バカミスとしての切れ味は微妙でした。
個人的にはバカミスってシリアスな雰囲気なのに
お馬鹿に突き抜けているオチがいいと思うのですが、
この作品の場合は最初から最後までゆるかったです。
そのせいで全体的にダラッとしてしまった印象。
関係者全員が犯人というオチもバカミスとしては
パワー不足で、読者としては盛り上がれなかったです。
主人公や署長の行く末も投げっぱなしでしたし。

タイトルにもバカミスっぽさが足りなかったせいで
普通の日常ミステリーとして購入した人が多そう。
ドミノ倒しという言葉は作中で使われていたものの、
特にインパクトのあるシーンではなかったので
これまた盛り上がれなかったのが辛かったです。

全員犯人系で明るい作品というのは珍しかったですけど、
結果的には失敗しているように感じました。
バカミスの失敗パターンとして興味深くはあるのですが…。