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2019/05/18

『地獄の犬たち』深町秋生 感想

地獄の犬たち
地獄の犬たち
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深町 秋生
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ボリューム的にも内容的にもずっしり重い暗黒小説。

主人公はヤクザ組織にスパイとして潜り込んだ警察官。
しかし海千山千のヤクザたちの信頼を得るため
残忍な殺戮を繰り返しているうちに、
次第に身も心も擦り切れていくことになります。

この主人公の描写がなかなか絶妙で、
最初は犯罪者を憎んで潜入捜査に参加したはずが
ヤクザたちとともに死線を超えていくうちに
仲間意識が芽生えていく流れが自然に描かれています。
最後にロクでもない結末が待っているとしか思いつつも、
先が気になってどんどん読み進めてしまいました。

実際ロクでもない結末だったわけですが、
むしろこの作品の場合はそれが心地よいですね。
これだけ殺しまくってハッピーエンドだと
それはもう後味悪かったでしょうし、
バッドエンドと言っても簡単に終わらせるのではなく
この先苦しみ続ける方向だったのもポイントが高い。

薄汚い殺し合いの中にもキラリと光る友情や愛情があり、
そういう美しさをしっかり見せつつも
ロクでもない地獄であるという主張は譲らない。
そんな作品が読みたいときにはピッタリな物語でした。
2019/05/17

『老侍』吉川永青 感想

老侍
老侍
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吉川 永青
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老いてなお盛んな老武将たちを扱った短編集。

朝倉宗滴、武田信虎は他の作者でも読みましたし、
宇佐美定満、島左近は決戦シリーズで読みましたが、
龍造寺家兼、長野業正が主人公の話は初めて読むかも。

龍造寺家兼、朝倉宗滴はまさに老いてなお壮んという印象。
どちらもやるだけやって満足死ぬという感じで、
こういう生き方には憧れてしまいます。
爺になっても心は若く持ちたい。

長野業正、宇佐美定満は上の二人と比べると真面目ですが、
それでもやるだけやって死んだことには違いない。
特に長野業正はほとんど知らなかったので新鮮でした。
こういう出会いがまだまだあるから戦国時代は面白い。

今回の短編で異質なのが武田信虎。
この男だけは思いっきり悔いを残して死んでいますが、
まあこの男の場合はよっぽど大成しない限り
満足しないでしょうし、この末路もだとうかなと。
ただその分意外性には欠ける話という印象です。

ラストの島左近の話は三成との友情物。
三成が処刑される前に柿を断った理由が
左近から絶対諦めるなと言われたからというように
繋げたのはちょっと感動してしまいました。
こういう一捻りした解釈は歴史小説の醍醐味ですね。
敗れたとはいえ、清々しさの残る後味でした。
2019/05/12

『ギケイキ2: 奈落への飛翔』町田康 感想

ギケイキ2: 奈落への飛翔
町田康
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町田康さんが描く面白義経記第2章。

今回は義経が頼朝と再会するところから始まるので
いよいよ平家への逆襲の始まりか…と思いきや、
平家が一瞬のダイジェストで滅ぼされたのには笑いました。
いやそこを飛ばすんかい。

そんな展開もあって義経が頼朝に滅ぼされるところまで
一気に進むのかと思いきや、これがなかなか進まない。
義経と頼朝の仲がギクシャクし始めて
義経が九州へ向かおうとして失敗し、
吉野に潜伏するところまでで1冊使い切っています。

まあこの作品特有のキャラ同士のダベりで
ページを消費しているという面もありますが、
道中であった小競り合いもしっかり見せたりしているので
決して無駄に長い小説になっているわけではないです。
キャラ同士のダベりも面白いですしね。
特に弁慶はかなり頭おかしくて読んでて楽しいです。

このペースだと次回は奥州に辿り着く辺りまでかな。
それともまたそこら辺をすっ飛ばすのか。
いずれにしても、次回が楽しみなシリーズです。
2019/05/09

『缶詰少女ノ終末世界』 感想

公式はこちら。
シルキーズプラス『缶詰少女ノ終末世界』
シルキーズプラスの最新作である
『缶詰少女ノ終末世界』をクリアしてみました。

内容としてはいつもの渡辺僚一作品で、
量子力学を交えたライトなSFエロゲーとなっています。
作品の展開もいつも通りという感じで、
珍妙な登場人物たちがわちゃわちゃやりつつも
徐々に不思議な世界の謎が明かされていって、
最後には爽やかな雰囲気で纏まるといった流れですね。

今回重点を置かれていたのは世界の書き換え。
話の途中で何度も世界が切り替わるのですが、
少しだけ前の世界からズレ状態で始まることもあれば
突然緊迫した状態に放り出されることもあって、
ただのループ物とはちょっと違った楽しみ方が出来ました。
こういう分かりやすい描写の仕方は流石です。

その一方でエロゲーとしては微妙かなと思う面も。
今回は個別ルートもなくエロシーンも10回と少ないので、
そっちを期待する人にはオススメできません。
一応、各ヒロインをピックアップする流れはあるものの、
明確なルート分岐はなく一本道で終わる作品なので、
ヒロイン目当てだと物足りなさは感じます。

キャラの扱いとしてもヒロインは脇役で、
メインはダブル主人公である小海とツバキという印象。
この二人の視点を行き来しつつ
世界の謎に迫っていくという作品なので、
いつも以上に「世界」に重点が置かれていましたね。
そういう点では「世界」と「ラブコメ」を関連付けた
あきくるは上手くエロゲーしていたと思いますけど。


まとめ。
SFとしては面白いことをやっているのですが、
エロゲーとしてはパワーは控えめな作品でした。
終末物は割と好みなのに少し中だるみしてしまったのは
ツボなキャラがいなかったことが原因だと思います。
主人公かヒロインにストライクなキャラがいれば
もう少し熱中できたかもしれませんね。
…いやヒロインが好みだと扱いに不満が出たかもですが。

いつもより更にSFに寄った作品なので、
ヒロインの扱いやエロをある程度割り切れる人で
SFエロゲーを欲する人なら購入するのはありかもしれません。
いや割とニッチな層向けな気がしますけどね。
2019/05/02

『和香様の座する世界』 感想

公式はこちら。
みなとカーニバル『和香様の座する世界』応援中!
みなとカーニバルの新作である
『和香様の座する世界』の感想です。

終わった感想としてはまずまず良作という感じでしょうか。
大作ではないですが価格相応のボリュームはありますし、
シナリオの方も忘れられないほどの衝撃はないものの、
日本神話ベースで綺麗に纏まっています。
和香様や琉々葉もちゃんと可愛かったですし、
田中ロミオさんのミドルプライス作品と聞いて
期待していたレベルの作品をしっかり作ってきた感じ。
これで分かる人なら購入して損はしないかと。

そんな感じで基本的に良作と評価したうえで、
プレイしていて気になった点を挙げていきます。

まずは和香様と琉々葉が出ない場面でのパワーダウン。
まあ、これは自分が最初から和香様と琉々葉が
目当てだったということもありますが、
中務兄弟との会話や別視点での妖怪同士の会話などは
ちょっとダラダラしているように感じました。
ロミオさんも企画のタカヒロさんも
個性的なキャラを作ることには定評があるのですが、
今回は微妙なキャラが多かったような気がします。
店長や藤子は割と好きですけど。

次にシール集めのめんどくささですね。
選択肢ミスによる即BADエンドじゃなくて
かなり前の選択肢でシールを回収していないのが
原因だったりするので、回収しに行くのが結構な手間。
タイトル画面左上での回収もちと分かりにくいです。
シールで神話オープンというシステム自体は
面白そうだったですが、もう一捻り欲しかったところ。
ここら辺は最初から誠也さんを頼った方がいいかも。

あとは微妙にスッキリしない結末。
神話を考えるとあの落としどころになるんでしょうけど、
完全に解決してスッキリという感じではないので、
読後の爽快感は少なめでしたね。
こう繋げるのか~という感心はありましたけど。


まとめ。
最初にも書きましたけど、まずまず良作という感じでした。
和香様と琉々葉は可愛かったですし、
ストーリーの方も結構凝っていてかつ纏まっています。
物足りない部分もいくつかあれど、
どれも購入を躊躇わせるほどのものでもない。
割と安心して手を出せるミドルプライス作品でしょう。

まー本音を言えばもっと突き抜けて欲しかったですが、
そこは次回作に期待といったところでしょうか。
(またこのメンバーでエロゲー作ってくれるか微妙ですが…)