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『宇喜多の捨て嫁』木下昌輝 感想
宇喜多の捨て嫁
宇喜多の捨て嫁
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木下 昌輝
文藝春秋
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戦国時代の梟雄として名高い宇喜多直家の物語。
本作は6本の短編から成り立っていて、
時には直家本人、時には直家の周りにいた人物の視点で
宇喜多直家という人物について描かれています。

一般的には裏切りや暗殺のイメージが強い直家ですが、
この作品ではそこに至る経緯を掘り下げているのが面白い。
若い頃の直家は真面目で誠実な人物として描写され、
そんな彼が主君である浦上宗景の陰謀によって
家中の粛清に加担させられた結果が数々の暗殺という結論。
戦国時代に限らず有力家臣を粛清する主君は多いですし、
これはなかなか説得力のある掘り下げ方だと思います。

そして対抗出来る家臣がいなくなった結果、
直家の存在が大きくなり過ぎて
宗景自身が制御できなくなるというのもまた納得の結果。
便利な道具だった人物がいつの間にか制御不能な化け物に
変化してしまうというのは個人的には大好物です。
直家が稀代の謀略家として大成していくとともに
奇病・尻はすによる膿と腐臭が増えていくという演出も良い。

短編の配置構成も見事で、最初に直家の娘の視点で
直家の最期までを見せ、そこから直家の子供時代に戻り
直家の成長と挫折、そして闇に飲み込まれていく姿を描写し、
最後は別視点で再び直家の最期を見せるという、
最初と最後が繋がる美しい流れになっています。
老婆の正体が分かると切なさが溢れるのには参った。
ラストの一文による哀しい読後感もたまりません。

宇喜多直家は汚い暗殺を多用する反面、
部下には優しく宇喜多軍団は鉄の結束を誇ったといいますが、
その二面性を納得の行く形で見せてくれる作品でした。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

『ニュートンと林檎の樹』体験版 感想
公式はこちら。
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新興メーカーLaplacianの2作目である
『ニュートンと林檎の樹』を体験してみました。

かの有名なニュートンのいた時代にタイムスリップし、
そこで歴史を修正して現代に戻ってくるゲーム。
と言われても正直、エロゲーとしてどんな作品になるのか
さっぱり分からなくて不安しかなかったのですが、
いざプレイしてみるとなかなかどうして、
テンポ良く進む物語に夢中にさせてくれる作品でした。

主人公と幼馴染がタイムスリップする、というところまでは
あらすじ通りなんですけど、そこからの展開が面白い。
住むところを探したり未来人だとバレないように振舞うという
基本的なところはもちろん、謎の天才ラビとの絡みや
万有引力が消えることでの世界への影響など、
次から次へとイベントが起こって最後まで飽きさせない。
体験版の最後もいい感じで先が気になる終わり方でしたし、
今のところ純粋に物語として面白いという感じです。

しかしその反面、物語の先が気になったせいで
ヒロインのインパクトが薄れてしまったような印象も。
出番の多い幼馴染の四五、テンション高いラビはともかく、
アリスと春は今のところあまり活躍できていません。
メイドさんの方がまだ目立っていたぐらいです。
とはいえまだまだ物語は序盤ですし、今後の活躍に期待。
物語の鍵となるであろうアリスはともかく、
春はどう生かしてくるのか気になるところですね。

あと細々と気になったところ。
日常テキストはシモネタ多めでしたけど
物語の流れを阻害するほどではないちょうどいいバランス。
ヒロインの貧乳、巨乳が半々というのもバランスがいい。
四五の薀蓄ムービーは新鮮な演出ですね。
ダラダラ喋られるよりは薀蓄に興味が持てます。
主人公の科学への逃げ腰な姿勢はイラッとさせられますけど、
タイムスリップという異常事態への適応力は高めなので
読むのが苦痛というほどではなかったです。


まとめ。
素直に先が気になる作品でした。
こういうタイムスリップ系の作品といえば
初手から壮大な設定を感じさせるものが多いのですが、
この作品はニュートンという着眼点が新鮮でしたし、
そこから話を丁寧に広げているところも好感を持てます。
このまましっかり広げてしっかり畳んでくれればいいのですが…。

ここ最近の体験版はあまり惹かれる物がなかったのですが、
久々に気になる作品に出会えてちょっと嬉しかったり。
今のところ4月の有力候補です。

テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第49話 感想
『マクギリス・ファリド』

オルガ、普通に見張りに殺されたっぽい。
これ完全に油断して姿を晒したオルガの失態っすね…。
オルガの死に直面しても落ち着いている三日月。
少しは動揺するかと思ったけどそこまで柔じゃなかったかー。
普通ならここで動揺して立て直すまで数話使いそうですが、
これでもブレないというのが三日月の個性でしょう。

地上では鉄華団基地への総攻撃が開始された頃、
宇宙でもマッキーがラスタル艦隊への突撃を開始。
マッキーはこの期に及んでも諦めていないどころか、
むしろ単機でラスタルを討つことに燃えている様子。
たった一人の力でも世界を変えられることを証明することで
虐げられている者たちに希望を与えるというその考え、
理解できなくもないですが、その先にあるのは修羅の国。
今の世界に満足する者たちには受け入れられない考えです。

そんなマッキーの前に立ち塞がるのはやはりガエリオ。
二人の因縁もいよいよ決着の時か。
一方、地上ではハッシュが死にそうに。
いや機体が爆発してないので生き残る可能性もありますが、
最近の流れを見ていると死んでそうな気がします。
しかしハッシュがやられたとき三日月がちょっと焦ってるの、
最初と比べて随分仲良くなった感があって良いですね…。

バエルVSキマリスの一騎打ち。
今まで大人の汚い強さを見せ付けてきたラスタルも
この戦いは見守る構えのようで、二機は激しく激突します。
アインの力を持ってしても押され気味だったガエリオですが、
機体のダメージを考えない無茶な攻撃によって
戦いの流れは徐々にガエリオ側に傾いていきます。
はぁー、お互いの機体がボロボロになっていくのたまんねぇ!
そして最後は両機体ともに大破と。
久々にいいロボットバトルを堪能させて頂きました。

気体を捨てて脱出したマッキーの前にガエリオが。
仮面が銃弾を弾くシーンはちょっとギャグっぽいなぁ。
でもマッキーとガエリオのやり取りはちょっと泣けました。
マッキーがガエリオやカルタと一緒にいるときを
本当に心地よく感じていたというのは切ないですし、
ガエリオがマッキーを許しそうになるのもまた切ない。
この二人の関係は本当に好きだなぁ。

さて、後は鉄華団が何人生き残るかですが、
物語の盛り上がりとしてはちょっと苦しいか。
一応、地上にはジュリエッタが向かっているとはいえ
三日月とのバトルが今回ほど盛り上がるとは思えないですし、
どうにも消化試合的な印象が拭えません。
こういう予想を裏切ってくれるといいのですが…はてさて。

テーマ:機動戦士ガンダム 熱血のオルフェンズ - ジャンル:アニメ・コミック

トヨタ・ヴィッツハイブリッド 試乗感想
トヨタのヴィッツがビッグマイナーチェンジ。
本来ならフルモデルチェンジするタイミングなのですが、
TNGAプラットフォームの投入がまだまだ先になるため
マイナーチェンジでてこ入れする作戦らしい。
他社が次々と新型を投入する中、果たしてそれで戦えるのか。
というわけで今回のMCの最大の売りである
ハイブリッドグレードに早速試乗してきました。

今回のMCでは内外装の変更に剛性強化、ショック交換と、
ビッグマイナーチェンジに相応しい変更が行われています。
ヴィッツはこの世代の初期型にも乗ったことがあるのですが、
妙にバタバタとした安っぽい乗り味だった記憶があります。
しかしその後、1度目のビッグマイナーチェンジが入った後は
走りの質感が大きく上がっていたのも記憶に残っています。

今回は走りについては更に進化させたということもあって、
しっとりとしつつ安定感のある挙動については文句なし。
スポーティーというほどではありませんが、
乗り心地と安定感を両立させているのはなかなかのもの。
流石にスイフトやデミオと比べるとハンドリングは劣りますが、
それらよりも大人しく走りたいという人には
魅力的なバランスに仕上がっているのではないでしょうか。

エクステリアは更に口が大きくなってクドくなりましたけど、
個人的にはこういうクワッとしたデザインは嫌いじゃないです。
リアのデザインも分割ランプがいい感じですね。
MC前のデザインが好きじゃなかったのでこれも好印象。

ただ、内装に関しては相変わらずいまいちでした。
デザイン自体は平凡ではあるものの悪くないのですが、
どう調整してもドラポジが決まらなかったです。
テレスコ付きなのにここまでしっくり来ないのは珍しい。
足元もフットレストがないせいで左足が疲れます。
これは自分でフットレストをつける人が多いのも当然か。
スイッチ類があちこちにばらけているのも気持ち悪い。
確かに自動ブレーキ搭載以降、車のスイッチは増えましたけど、
新しい車はそこら辺を頑張ってまとめているのと比べると
ヴィッツのスイッチ配置はいかにも古臭い。
あと数年売るならもう少し頑張って欲しかったです。

HVシステムも今となっては目新しさがないですね。
目新しさがないのはガソリン車も同じですが、
ガソリン車と比べるとエンジン音の貧弱さが目立ちます。
もちろん燃費がいいというメリットはあるのですが、
個人的にはそろそろ分かりやすい進化が欲しいところ。
まあその手の楽しさを求める人はもう少し待って
GRでも買ってくださいってことなのかもしれませんが。


まとめ。
マイナーチェンジとしては気合が入っているものの、
他社のコンパクトカーと戦うには力不足な気がします。
足回りは悪くないのですが、その他の部分に関しては時代遅れ、
価格だけはトヨタ車らしく高いというのがなんとも。
せめて対人自動ブレーキやサイドカーテンエアバッグは標準装備、
オプションでACCを付けられるぐらいでもよかったのでは。

とはいうものの、自分の周りにも装備や性能を気にせず
なんとなくトヨタ車を買ってる人が多いですし、
そのまま儲けるのが商売としては正しいのでしょうね。
色々調べている身としては納得できないもやもやが残りますが。

そんな定番のトヨタ車への文句が出たところでお開きとします。

テーマ:新車・ニューモデル - ジャンル:車・バイク

『ビビビ・ビ・バップ』奥泉光 感想
ビビビ・ビ・バップ
ビビビ・ビ・バップ
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講談社
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猫と音楽とSFの入り混じったファンタジー小説。
一応、奥泉さんの過去作品と繋がりがあって
そちらを読んでいればニヤリとできる場面もありますが、
この作品から読んでも十分楽しめると思います。

主人公は女性ジャズピアニストのフォギーさん。
34歳という現代では中年に当たる年齢ですが、
舞台となる21世紀末は平均寿命が大きく伸びたせいで
まだまだ精神的にも肉体的にも若者といっていいレベルです。
他にも紙の本が絶滅して本屋がなくなってたり
携帯端末も装着型になっていたりと、
想像しやすい近い未来の姿が描かれているのが面白い。
お墓ですらネット上に作るとなると
風情もなにもあったもんじゃないようにも思えますが、
作中のようなお見送りが出来るならこれはこれでありかも。

そんな世界でちょっとお間抜けなフォギーさんが
人類の命運を握るゴタゴタに巻き込まれるのがこのお話。
話の肝となるのは人類VSコンピューターという
使い古されたSF作品と同じネタなのですが、
作中の人物も使古されたネタだと分かっていても
コンピューターの暴走を止められないのは少し怖いです。
まあ、今の自分たちにしてもコンピューターに対して
どんな手が打てるのか微妙なところですが。

この場合のコンピューターというのも
厳密にコンピューターといっていいのか微妙なところで、
人間の記憶をそのまま移したコンピューターを
機械として扱っていいものかというのはありますし、
同じ意識でも人の身体を失うだけで変質してしまうと思うと
これまた怖いようなやるせないような気持ちになります。
逆にかつての偉人の技術だけを移植されたロボットたちが
勝手に動き出して最後にセッションするシーンには、
意思の有無とか細かいことはどうでもよくなるぐらいの
カタルシスを感じさせられたりもしました。

奥泉さんの作品は地の文の軽快さが特徴ですけど、
話の方もめちゃくちゃ凝っていて面白いので
そろそろ長編の一本ぐらいは映画化して欲しいところ。
今作なんかは音楽シーンとかSFシーンとか
ビジュアル的に面白いシーンも多いですしね。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学