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2018/08/13

『化身の哭く森』吉田恭教 感想

化身の哭く森
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呪いがあると噂される山に入った学生たちが次々と死亡。
彼らの死に隠された謎にいつもの元刑事なおっさん探偵と
クールビューティー刑事が挑むミステリー小説です。

明らかに殺人だと分かる殺され方をした方はともかく、
熱中症による死亡については原因不明で不気味だったのですが、
塩水による浸透圧を使ったギミックは初めて見ました。
今回は犯人の自白で確定しましたけど
後から証拠を見つけるとなるとかなり難しそうな気が。
食塩のルートから解明するしかないのか…?

殺人の方のトリックは鑑識が頑張れば
証拠を見つけられそうな気がしましたけどどうなんでしょう。
でもこういうレトロな仕掛けは割と好みです。
糸系のトリックにはロマンが溢れている。

呪いネタなのにいまいち怖さがなかったのは
呪いを追うのがコミカルなおっさん探偵だからかな。
とはいえこのおっさんの調査や推理の能力は結構高めなのに
ダメ人間臭漂っているところは嫌いではないので、
山に入ったり旧家を尋ねたりするだけでも面白かったです。
殺人の動機がマツタケというのもどこか滑稽でしたね。

このシリーズはインパクトがある訳ではないのですが、
読みやすくて一定の意外性もあるので安心して手を出せます。
2018/08/09

『足利兄弟』岡田秀文 感想

足利兄弟
足利兄弟
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岡田 秀文
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南北朝時代初期の動乱を足利尊氏の正室である登子と、
尊氏の弟である直義の視点から描いた歴史小説。

序盤は尊氏の対鎌倉幕府戦争がメインになるのですが、
それを北条家の血を引く登子視点で見せているのが面白い。
北条側の視点なので幕府が倒れるという発想がなく、
尊氏の行動が信じ難い裏切りに見えるのが新鮮ですね。

倒幕後は直義視点が多くなり、対南朝戦、
そして足利家内部の権力闘争がメインとなります。
登子も直義もその場のノリで調子のいいことを言う尊氏に
振り回され続けるという点では共通しています。

尊氏の精神的なおかしさについては
歴史小説でもおいしいネタとしてよく使われていますね。
感情の起伏が激しくある種のカリスマがあるものの、
半身であるはずの直義や高師直も切り捨てる非情さもある。
本作では直義も師直も尊氏を排除するか迷うものの
結局は情に負けて実行できないまま終わるのですが、
それを実行できるのが尊氏の怖さなのでしょう。

ただ、敵を滅ぼせる容赦なさを持っている一方で
自分自身が滅ぼした北条家や直義のために
周りが引くほど悲しんで泣けるのも尊氏の不思議さ。
こういうところがあるから直義や師直も
尊氏を見捨てることが出来なかったんでしょうね…。

足利尊氏、正直近くにいて欲しくない人物ですが、
小説の題材としては非情に面白い人物だと思います。
2018/08/03

『亡霊の柩』吉田恭教 感想

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探偵と警察の両視点から捜査に挑むミステリー小説。

このシリーズの特徴といえば探偵と警察二つの視点の他に
ホラーめいた状況による不気味さがあるのですが、
今回はホラー要素が薄めに感じられました。
タイトルが一番のホラー要素かな。

そのせいで全体の印象も薄く感じられたのですが、
二転三転する話の作りは健在なので面白いのは確か。
銃殺された暴力団員、行方不明になった元孤児、
結婚直前にホテルで刺殺された男性など、
一見関係ない死体がゴロゴロ出てきた末に
それらの意味が繋がっていく構成は熟練の域でしょう。

今回のトリックの一つはミステリーでは定番の
消える凶器ネタですが、こういう使い方は始めて見たかも。
古典的なネタでもまだまだ使えるんだと感心しましたよ。

いつものホラー要素がなかったのは残念ではあるものの、
隠された人間関係やトリックを重視した古典的な作りは
むしろ正統派ミステリーといっていいかもしれません。
今回も楽しませて頂きました。
2018/08/01

『海道の修羅』吉川永青 感想

海道の修羅
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海道一の弓取りと謳われた今川義元の物語。

この物語の今川義元は頭脳明晰ながらも凄く短気。
周囲の状況にしょっちゅう切れそうになりながらも
そこを太原雪斎が上手く抑えることで今川を安定させ、
甲相駿三国同盟へと繋げていきます。

作中で雪斎は義元を天下人の器だと評していますが、
自分としてはそうは思えなかったですね。
確かに優秀な人物ではあるものの、
短気なところや策に溺れるところが多過ぎる。
人間としての器は雪斎の方が上でしょう。

ただ、雪斎にとって義元は息子のようなものですし、
贔屓目で見てしまったと思うとそう不自然でもない。
義元の方も雪斎の期待に応えようと焦り、
その結果が桶狭間だと思えば同情できる部分もあります。

物語としては面白く、兄弟相克の花倉の乱や
甲相駿同盟に至るまでの氏康、信玄との謀略合戦など、
あまり他の作品で書かれない部分が読めたのは良かった。
それだけに桶狭間の描写はがっかりでしたけど、
そこは前述したように焦りがあったのでしょうね。
修羅になろうとしてもなりきれない義元の姿に
どこか哀れさを感じさせられる作品でした。
2018/07/29

『宿星のガールフレンド夕里編』 感想

公式はこちら。
mirai『宿星のガールフレンド』7月27日発売!
miraiの新作、『宿星のガールフレンド』の感想です。

今回の作品は3部作の1作目。
正直、分割作品って悪いイメージがでかかったのですが、
この作品についてはブラボー!な出来でした。
廉価ゲームとしても1ルートとしてもボリュームは十分ですし、
シナリオとしてもこれだけできっちり完結しています。

分割作品で一番の不安点だった前座ヒロイン臭が
ほとんど感じられなかったのは良かったですね。
謎が残りまくったまま終わられるのは本当に萎えます。
今作も後続ヒロインの方が話がでかくなる可能性はありますが、
それでもあからさまな未完ENDではないなら許容範囲。
プレイ後の不完全燃焼感がほとんどない作品でした。

シナリオの内容も満足度が高かったです。
魔法少女物なのでシリアスやバトルはあるものの、
あくまで主人公とヒロインの関係を深めるスパイスであって、
基本的にはテンポのいい会話の飛び交うラブコメ。
同居人として少しずつ関係を深めていき、
付き合い出してからはひたすらイチャラブするという
エロゲーとしての基本がしっかり抑えられていましたね。

この作品の一番の魅力はヒロインである夕里でしょう。
ネアカでお馬鹿で天才という属性を持つ夕里ですが、
シナリオの方もひたすら彼女の可愛さでゴリ押しする流れ。
挫折知らずの天才故に打たれ弱いところもありますが
そこは主人公が持ち上げてあげればすぐ立ち直りますし、
誉めてくれる主人公にベタベタ懐くところは凄く可愛いです。
普段は主人公のことを凡人凡人と茶化すくせに
主人公のことを好きだという気持ちは明言するので
弄られているにもかかわらず爽快感があるんですよね。
序盤では男嫌いを公言していた夕里が
終盤ではごく自然に結婚を考えているのはとても感慨深い


あと、主人公と夕里の相性も良かったです。
自分のことを凡人と思いつつも努力を怠らず、
夕里の才能を認めてそこを誉めることは躊躇わない。
かといって決して夕里の言いなりなだけではなく
助言やツッコミはしっかりこなすというのは地味だけど良い。
今作のテンポのいい会話は二人がいてこそでしょう。
縁の下の力持ちとしてヒロインを生かせる良主人公でした。


まとめ。
完全に予想をいい方向に裏切ってくれました。
もともと夕里というヒロインは好きだったものの、
分割作品の1作目として微妙な扱いになるのかという不安が
かなり大きかったのですが、完全に杞憂でしたね。
最初から最後まで夕里は可愛かったですし、
良いイチャラブを見た後特有の充実感があります。
最近は年のせいで枯れ気味だったのですが、
久々に「同棲イチャラブは良いぞ…」と思える作品でした。

3部作とはいえヒロインの好みでは夕里一強だったので
夕里編のみ購入する予定だったのですが、
この出来ならマーヤ編も楽しめそうなので購入予定に変更。
作品の良さで掌を返させてくれるのは大歓迎なのです。