2017/11/18

『虚空のバロック』体験版 感想

公式はこちら。
『虚空のバロック(ソラノバロック)』を応援しています!
lightの昏式ラインの最新作である
『虚空のバロック』を体験してみました。
lightではあるものの今回の原画は上田メタヲさんなので
どことなくブサイク作品のような雰囲気を感じます。

あらすじを見た時点では震災によって発生した閉鎖空間での
能力バトル物という設定にピンと来なかったのですが、
体験版をプレイしてみると意外とすんなり楽しめました。

でも舞台設定が結構複雑そうなのは確かですね。
閉鎖空間での能力バトル物かと思っていたら
あっさり閉鎖空間から脱出できてしまって、
でも外の世界は外の世界で謎の組織が暗躍していたりと
なかなか先が読めない展開になっています。
閉鎖空間だけだと話が広がりにくそうと思っていただけに
この大きな舞台転換にはいい意味で裏切られましたよ。
この調子で状況が大きく二転三転するのなら
最後まで退屈することはなさそうです。

主人公である直は公式のキャラ紹介だと捻くれているような
書き方でしたけど、屈託があったのは冒頭の一瞬で
すぐに熱血漢になってくれたのは良かったですね。
ただでさえ状況がごちゃっとしているのに主人公まで
ウジウジ考えるタイプだったら話が進まないところでした。

メインヒロインである幸先輩は控え目で落ち着いているので
今時のヒロインとしてはちょっと地味ですが、
いざというときの判行動力はあるので印象は悪くない。
バトル物でのヒロイン評価はどれだけ役立つかというのも
大きいですし、今後の活躍にも期待したいところ。
やちると加護は今のところサブって印象かなー。
直と幸先輩の関係が主人公とヒロインの王道過ぎて
ここから外れる姿がイマイチ想像しにくいのが難点ですね。


まとめ。
最初は微妙に感じていたもののプレイしてみると面白かった。
閉鎖空間物かと思っていたらあっさり脱出したのは
完全に予想外でしたし、先が気になる終わり方でした。
まだまだ謎だらけの状況ですが昏式さんなら
それほど変な着地点には持っていかないでしょう…多分。
ただ、フルプライスのエロゲにしてはヒロインが弱めかなと。
幸先輩はともかく他二人は今後頑張らないと厳しいかも。

今のところ1月の候補ではありますが確定とまでは行かず、
他の作品次第では候補落ちかもというラインですね。
2017/11/15

『決戦!関ヶ原』 感想

決戦!関ヶ原
決戦!関ヶ原
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葉室 麟 冲方 丁 伊東 潤 上田 秀人 天野 純希 矢野 隆 吉川 永青
講談社
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関ヶ原をテーマに7人の作家が書いている短編集。

まずトップバッターの伊東潤さんの徳川家康が面白い。
三成と家康が豊臣家の武断派七将を排除するために
手を組む場面から始まるのですが、
この機にお互いがお互いを除こうとしてるから油断できません。
陰謀が動き出してからのグダグダっぷりも面白い。
伏見城を無血開城する予定が鳥居元忠の暴走で城兵が玉砕して
家康が頭を抱える場面では笑いました。
その後も上手く行かずたまに家康が切れてるのが面白過ぎる。
伊東さんの作品では珍しいコメディ色の強い作品ですが、
またこういうのを読みたくなるぐらい楽しめました。

吉川永青さんが取り上げたのは可児才蔵。
関ヶ原で抜け駆けした井伊直政を福島正則陣営の可児才蔵が
追い回すというこれまたコメディ色の強い作品で、
お馬鹿な才蔵、正則と直政のクールな対応が好対照でした。
伊東さんの作品と吉川さんの作品は明るめですけど、
これは明るい話をわざと前半にまとめたのか偶然なのか。

天野純希の話は織田有楽斎が主人公。
腰抜けという汚名を晴らすために参戦しながらも
荒事には向いていないため無様を晒す有楽斎ですが、
大軍に翻弄される小勢という雰囲気はよく伝わってきました。
徹底して小人物として描かれる有楽斎も共感しやすかった。

上田秀人の宇喜多秀家の話はひたすら暗かったです。
徳川に付いた福島や加藤の恩知らずっぷりを愚痴り、
三成の机上の空論に呆れ、宇喜多から出奔した家臣達に怒る。
ひたすら文句と自嘲を繰り返し、あのときああすればと
言い続ける歴史小説というのはこれはこれで新鮮ですね。

矢野隆さんの島津義弘の話はこの本で一番好きです。
家康からも三成からも軽んじられた義弘が、
石田と徳川の戦いが終わった後に
島津と徳川の戦いとして仕切り直す拘り。
この頑固さこそ薩摩武士という感じで燃えました。

冲方丁さんの主人公は小早川秀秋。
秀秋が主人公の小説はいくつかありますが、
ここまで実利重視の人物として描いているのは珍しいかも。
とはいえ冷たいわけではなく、国を豊かにするということを
冷静に考えた結果家康に付くという考え方は面白かったです。

ラストは葉室麟さんの石田三成。
毛利の狙いが三成と家康の共倒れだったら…という発想を広げ、
三成が毛利を巻き込んで負けることによって
豊臣家の延命を図ったという筋書き。
これ自体は面白い発想でしたけど、最終的に徳川によって
豊臣家が滅ぼされてるせいでちょっと苦しかったかな。
もう一捻りあれば斬新な真相として素直に驚けたんですけどね。

そんな感じで実に読み応えのある短編集でした。
作家名を見てピンと来る人なら損はしない本だと思います。
2017/11/11

『イアリー 見えない顔』前川裕 感想

イアリー 見えない顔
イアリー 見えない顔
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前川裕
KADOKAWA (2016-11-26)
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主人公はつい最近妻を失った大学教授。
そんな彼のもとに深夜、謎の女性が訪れ、
それを機に彼の周りでは不可解な事件が多発するように…。

とにかく冒頭の女性が訪ねてくるシーンが不気味で、
いきなり不安を煽りまくってくるのが上手いです。
それに対して昼間は大学総長選挙での政治活動という
凄く俗なイベントが同時進行しているチグハグさも良い。
まったく関係ないように見える二つの出来事が
これからどう絡んでいくのかワクワクさせられました。

しかし中盤からは失速してしまった印象です。
学内選挙の方は情勢が二転三転して面白かったのですが、
教授と義妹(妻の妹)の行動がいまいちでした。
妻の妹との爛れた関係とか暗躍する宗教団体とか
色々な要素が絡んできたりするものの、
どれもこれも中途半端で盛り上がりに欠たまま決着。
いつの間にか最初にあった不気味な雰囲気も薄れ、
後半は何ともダラダラとした流れに…。

おそらく義妹がもっと恐ろしいキャラだったら
濡れ場でも怖さがあったんでしょうけど、
ごく普通の濡れ場という感じだったせいで
怖さまで流されてしまったような気がします。

前川さんの小説といえば不気味さが売りですが、
今回はそこがおざなりになってしまったのが残念。
ラストに思い出したように不気味な演出されてもなぁ。
次回作はもっと気合入った怖さを期待したいところ。
2017/11/09

『戦旗 大坂の陣 最後の二日間』松永弘高 感想

戦旗 大坂の陣 最後の二日間
松永弘高
朝日新聞出版 (2016-01-07)
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大坂夏の陣、最後の2日間を描いた歴史小説。
今まで何度も描かれてきたこの戦いですが、
今作の特徴は松平忠明をメインという点でしょうね。

松平忠明といわれてもどういう人物なのか
思い浮かぶ人は少ないと思いますし、
実際それほど大した活躍をするわけではないのですが、
それだけに伊達や水野といった味方の立ち回りや
毛利に真田といった敵の奮闘に振り回される立場で、
他の大阪の陣小説とは少し異なる雰囲気になっていました。

徳川側からすると勝って当然の戦ですが、
だからといってサボってたら家康が怒りそうですし、
無様に戦っても改易されそうということで、
徳川側としても必死になっているのは面白いですね。
水野みたいに戦うために戦ってるバーサーカーもいますが。

大阪側は毛利勝永がメインになっていましたが、
大阪側の最後まで描くなら真田よりもこの人でしょうね。
最初から最後まで戦い続けたその姿は天晴れ。
とはいえ真田が活躍していないという訳ではなく、
一瞬の隙を突いて家康本陣に突入する流れは燃えました。

家康の描写も面白かったです。
的外れな和平交渉をしたりとボケた部分もあるのですが、
真田が近付くと一目散に逃げる決断の速さは逆に凄い。
他人から見るとひたすらかっこ悪いですが、
ここで討たれてたらそれこそ桶狭間再びですしね。
一人本陣に残された大久保彦左衛門の対応も見事。

たった二日間という短い戦いでしたが、
登場人物それぞれに見せ場がある熱い小説でした。
2時間ぐらいの疾走感のある映画に向いてそうな作品です。
2017/11/06

『ノラと皇女と野良猫ハート2 -Nora,Princess,and Crying Cat.-』 感想

公式はこちら。
『ノラと皇女と野良猫ハート2』応援中♪
最近アニメでも話題になったノラととの新作である
『ノラと皇女と野良猫ハート2』をクリアしてみました。

内容としては新ヒロイン1人と前作サブ3人のシナリオ、
更に前作ヒロインのおまけシナリオの詰め合わせで、
2というよりは1.5という感じになっています。
とはいえボリューム面では新作1本分に匹敵していますし、
FDではなく2として売っても問題ないといえばない。

ノラととの売りであったギャグやシリアスに関しては
アニメを経たことによってより洗練されたようで、
前作よりも更に万人向けになっているように感じました。
特に軽いノリを維持したままシリアスに突入して
笑いと感動を同時に盛り上げる手腕はお見事。
一部重い場面もあるものの、それを最小限にすることで
全体的に明るい印象を与える構成になっています。
シリアスシーンで流れるポエムは相変わらずですが、
頭が痛くなるような電波ギャグはかなり抑えられていますし、
他人へオススメしやすい方向への進化を感じました。

今回はシナリオ格差については大分解消されていましたが、
それでも一部物足りなさを感じる場面はありました。
アイリス、ルーシア、ノブチナは質、量ともに文句なしですが、
ユウラシアについてはちょっとあっさり気味の内容。
まあユウラシアでこれ以上引き伸ばすのは難しそうですし、
理不尽なほど短かったわけでもないですけど。

シナリオの内容としてはアイリスは規模が大きく、
展開も二転三転するので長い割に飽きなかったです。
アイリスのギャーギャー五月蝿いリアクションも楽しかった。
ノエルは思ってたよりサブに徹していましたね。
ルーシアはシリアスからイチャラブへの落差が凄まじい。
まさかシア姉があそこまでぶっ壊れるとは思わなかったです。
エンド家母も地味にいい味出してて好き。

ノブチナのシナリオは今回一番重かったですけど、
周囲がいつも通りワイワイしているので
いい感じで重さが緩和されていたのは良かったです。
突然のレースゲームには笑うしかない。
あと枕抱えてるイベント絵がクッソ可愛くて死にました。

しかし前作ヒロインのシナリオは短かったですね。
エロゲでよくあるおまけシナリオレベルなので、
もう一堀下げあると期待していると拍子抜けするかも。
アイリスたちのシナリオが気合が入っていたのとは対象的。
まあアイリス自身は他シナリオで見事に空気になりますが…。
もしノラとと3があればここらのバランスが改善点かな。
これ以上キャラが増えると更に難しくなりそうですけど。


まとめ。
基本的にテンション高めのお馬鹿な日常会話で攻めつつ、
要所でほっこり感動させるというノラととらしい作品。
これならアニメから入った人にもオススメできます。
特にアイリス、ルーシア、ノブチナルートは素晴らしく、
これだけで十分元が取れたと思える出来でした。
パト以外の前作ヒロインの出番は控え目ですが、
今回の彼女たちはサブキャラだと思えばこんなもんかなと。

恋愛皇帝→ノラとと→ノラとと2と作品としての完成度は
しっかり上げてきていますし、今から次回作が楽しみです。
果たしてノラとと3になるのか、それとも完全新作になるのか…。